ココロ社

主著は『モテる小説』『忍耐力養成ドリル』『マイナス思考法講座』です。連絡先はkokoroshaアットマークkitty.jp

友達がいない人の特権的エナジードリンク「くさチャイ」の製法と味と効能について

話が長くなるので最初に製法についてまとめておきます。
 
【材料】
牛乳:200cc
砂糖:大さじ4杯
紅茶:10グラム
クローブパウダー:大さじ1杯
シナモンパウダー:大さじ1杯
生姜:20グラム
にんにく:20グラム
 
【製法】
①牛乳・砂糖・紅茶・クローブパウダー・シナモンパウダーを鍋に入れて、弱火で7分温める
②①の間に、生姜とにんにくをすりおろしておく
③生姜とにんにくを鍋に入れて混ぜ、2分温める
④茶こしを通してカップに注ぐ
⑤うへっ……なんだこの飲み物は!

 

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先月、「海外のセレブの間でバターコーヒーが流行している」という話題がわたしの脳に届けられた。痩せたり集中力がアップしたりするなどの効果があるそうである。集中力は本当かなと思わなくもないが、痩せたら腹の肉が視界の端でチラつくこともなくなるだろうから集中力はおのずとアップするということなのかもしれない。
 
もしかするとあなたは、「先月バターコーヒーを知ったとは、キミはどれだけout of dateなの」と英語まじりにわたしのことを嘲笑するかもしれないが、わたしがバターコーヒーの名を網膜に映したのは2年以上前なので、あなたが思うほどout of dateではないはずだ。ただ、網膜から脳まで到達するのに少々お時間をいただいてしまったことは認めざるをえない。通常の情報なら、網膜から脳に到達するのは一瞬のことだが、そのとき、バターコーヒーを愛飲しているという「海外のセレブ」という文字列に意識を占有されてしまい、バターコーヒーの情報そのものは網膜と脳の間にある踊り場のような場所に放置されていたのである。その踊り場には今もなお、ピェンローやメイソンジャーサラダなどが桐の箱に入って大切に安置されているのだが、それはともかく、「海外のセレブ」といわれて想起するのは、ミック・ジャガー、マイケル・ジャクソン、マドンナ、シルベスター・スタローン……中には他界してバターコーヒーがなくてもわりと大丈夫な状況になっている方もいるほどで、30年間ほどアップデートがかかっていない状況である。これでは、若者は言うまでもなく、中年同士の会話にも支障をきたしてしまう。たとえばミック・ジャガー先生にあらせられましては、73歳でも子を成しているので、まだまだ健康だと推察しているが、「海外のセレブ」の持ち駒がこの30年で増えていないのはたいそう心細い。あとひとりふたり、「海外のセレブ」を銘記しておきたいのだが、それがシャバからいなくなったり天に召されたりするたびに覚え直すのが面倒なので、品行方正かつ若めのセレブがよいと思い、ホーム・アローンに出ていた子役の子はどうだろうと思って「ホーム・アローン 子役 現在」で検索したが、シャバにはいるものの、名前が長くなっていて覚えるのが困難だし、苦労してそれを覚たところで、この先セレブでい続けてくれるのか不安が残った。仕方ないので、わたしの把握しているもうひとりの子役、「レオン 子役 現在」で検索し、「ナタリー・ポートマン」という、少なくともわたしが死ぬまでの間はセレブの地位にいそうな方の名前を覚えた。彼女はもはや子役ではなかったので驚いて、思わず「ナタリー・ポートマン ヌード」で画像検索をしてしまったのだが、その結果報告は措くとして、わたしは「海外のセレブ」と言われたときに、それなりに最近のセレブを想起できるようになったのだった。
このように海外のセレブについて考えていたせいでバターコーヒーそのもののことをすっかり失念していたのだが、満を持してバターコーヒーについて考えてみたいと思ったのが先月の話。せっかく覚えた海外のセレブには失礼かもしれないというか、わたしの把握している海外のセレブが実際にバターコーヒーを飲んでいるかどうかも知らないが、カフェインと油脂が入っていたら、そりゃあいい感じになるに決まってるジャンという感想を持った。
 
そもそも、わたしは長年にわたって、紅茶の不甲斐なさをどげんとせんといけんよ……とニセ宮崎弁で思い続けていた。以前、友人がイタリアに旅行に行ったとき、神父たちが紅茶を片手にトランス状態で語り合っているところを見たという話を聞いたのだが、そういうことである。どういうことかというと、紅茶は本来、優雅でおしゃれな飲み物というよりも、そのカフェインの効能から、ドラッグとしても愛飲されるべきであるということ。しかしながら、ソフトドリンクの中でのドラッグといえば、もっぱらコーヒーであり、紅茶愛好家の方々には、あなたたちやられっぱなしでいいの?と反語を飛ばしたくて飛ばしたくてうずうずしていた。そんなところに届けられたバターコーヒーのお知らせ。弊ブログをご覧になるのが初めての方でも、わたしがどれだけショックを受けた想像がつくはずである。
 
……などと前置きが長くなったが、まとめると、「紅茶をベースにしたドラッグのようなソフトドリンクの開発が急がれている」という話。以前、茶葉の量を限界まで増やしたロイヤルミルクティーを試作してみたのだが、大量のミルクと砂糖を以てしても、渋くて飲用不可だったので諦めたことがあった。少なくとも、茶葉を増やすという方向には限度があることを知った。ここでカフェイン濃度を高めていくことでバターコーヒーを凌駕しようという作戦はほぼ終了してしまった。
 
しかし、そのあと思いついたのが、もともと体があたたまるとか、スパイスでシャッキリするといわれているチャイをKAIZENする形。スパイスはそのまま入れて煮こむより、パウダーをそのまま入れた方が早いし効能があるとすれば煮出したエキスだけでなく、本体もそのまま味わった方がよい。まずこの点を従来のチャイからのKAIZENとする。
 
そして、チャイにバターを足すことも考えたのだが、すでにミルクを足しているので、味としても効能としても重なってしまい、適切でない。
うーん……と思ったが、ふと、ニンニクがあるじゃないか、と思った。ニンニクが甘い味なのはどうなのかと思うかもしれないが、「ニンニクのグラッセ」という、極めてアウトサイド寄りなデザートもなくはないので、試してみる価値はあるだろうと思ったのである。
 
以下、写真をまじえた製法を記させていただく。
 
 
【材料】
牛乳:200cc
砂糖:大さじ4杯
紅茶:10グラム フレーバーティーを使うと、より味がややこしくなるのでおすすめ。先述のとおり、茶葉を増やしすぎると、苦いというより渋くて飲めないので、10グラムが適量だと思う。
クローブパウダー:大さじ1杯
シナモンパウダー:大さじ1杯 これは五香粉に代えても中華風になって楽しい
生姜:20グラム
にんにく:20グラム
 
【製法】
①牛乳・砂糖・紅茶・クローブパウダー・シナモンパウダーを鍋に入れて、弱火で7分温める

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見た目、ややグロテスクだけれど、味もグロテスクなので期待して作っていただきたい。

 
②①の間に、生姜とにんにくをすりおろしておく
 
③生姜とにんにくを鍋に入れて混ぜ、2分温める
ここで、火を止めてから生姜とにんにくを入れてしまうと、いくらなんでも臭すぎるし、生のにんにくは体によくない(実際のところ、生のにんにくを食べすぎておなかを壊して寝こんだ経験あり)ので、友達がいなくてもここは加熱しておきたいところ。
 
④茶こしを通してカップに注ぐ
200ccの牛乳を使っても紅茶に吸われたり蒸発したりで、できあがりは100cc強といったところ。ただし濃厚なので、100cc以上飲みたいという気分にはならないので安心してほしい。
 

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エスプレッソ用のカップやショットグラスがあれば、使ってみると気分が出る。何の気分かはわたしにもわからないが……。
 
飲む前に、まず、目の覚めるような匂いがする。複雑かつ強烈。
飲んだら、口の中がにんにくで満たされる。材料を見たらわかると思うけれども、重量で換算すると、ニンニク10%にはなる清涼飲料である。清涼なわけなかろうが……。
 
味はどうかというと、おいしいことでおなじみのユンケルをさらに豊かにしたような味で、わたしは大好きである。味が濃いので一気に飲めず、ちびちびいただいた。また、インパクトが強すぎて、お茶請けなどはまったく必要ない、というか、飲んでいると喉が乾いてしまうので、むしろ自らが液状のお茶請けとなっているので、口直しにジャスミン茶とともに召しあがるのがよいかもしれない。
飲み終わった直後は、しばらく飲みたくないと思ってしまうのだが、翌日になると、また飲みたくなる不思議な味。何よりも、効能が顕著だった。飲んで2時間くらい経ったら体の疲れが消えており、倦怠感も一掃されていた。20時ごろいただいたのだが、翌日の朝の目覚めがスムーズで、いままでにない感覚である。体の各機能が底上げされているような不思議な感覚になる。そして効果は翌々日にまで持続しているように感じる。
 
ただ、大きな欠点がある。やはり大変臭い。ミルクで煮こんだが、帳消しになってもなお残る圧倒的な腐臭。わたしは友だちがほとんどいないため、どの程度匂っているのかはわからないが、自覚できる程度に臭いということは、第三者が嗅いだら、かなりの悪臭を放っている可能性が高い。翌日誰にも会わないと決まっているときのみ、飲むことを自分に許可しているし、バターコーヒーを出社前に飲むのに比べ、くさチャイは仕事(=人と会う)が終わってからしか飲めないので、仕事上の生産性アップにはまったく寄与しないのであった。