今回は、みそかつについて「別に……」と思っていたわたしが「最高」となるまでの話。特にみそかつに関心がないあなたにぜひ読んでいただきたいです。
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大阪育ちでいまは東京住まいのわたしは、名古屋というか愛知県の味噌を味付けに使う文化について関心がなかった。もし、「チョコレートかつ」や「ずんだかつ」のように、味の想像がつかないものが名物だったなら一度は食べてみようと思ったはずだが、とんかつに味噌を塗ったらどんな味になるかはだいたい想像がつく。最高でも最低でもない食べ物に違いないと想像していたので、長いあいだ、味噌カツをほとんど食べたことがなかった。正確には、何かの弁当に入っていたとんかつの小さな破片が味噌味だったことはある。しかし、それがどんな味だったかはまったく記憶に残っていない。やはり最高でも最低でもなかったのだろう。少なくとも、「また食べたい」と思うほどの体験ではなかった。
そんなわたしが「味噌カツは積極的に選択して食べるべきごちそうである」と感じるに至った道のりを、ただひたすら説明したい。お役立ち情報は特にないのでご注意くださいませ。
味噌カツを食べてこなかった理由
味噌カツを積極的に食べてこなかった理由はたくさんあるが、上位三つをあげてみよう。
第一に、そもそも選択肢として存在しなかった。とんかつといえばソースであり、ソース以外があるとしても、おろしポン酢くらいである。味噌だれが用意されている店は、わたしの生活圏、東京でも大阪でもあまり見かけなかった。
第二に、「味噌カツは名古屋人専用の食べ物」というイメージがあった。たとえばスガキヤのラーメンのおいしさは、放課後に友達とスーパーのフードコートで食べながら、だらだら過ごした記憶がないと理解しづらいと思う。味噌カツについては、テストで100点をとったり部活の大会で優勝したときのご褒美として食卓に登場するような習慣があり、愛知県出身で東京在住の人が味噌カツを口にしたとき、若いころの成功体験が走馬灯のように脳裏に浮かんでくるので、単体の味としてはそこまでではないにせよ、定期的に食べたい食事である……などと想像していた。
第三に、とんかつは安全パイを選びたくなる食べ物である。家で作るには大変だし、外食するにしても少しよいお値段である。さらにカロリーも高い。だからこそ「せっかくとんかつにありつける機会を得たのから、微妙な味のとんかつを食べるわけにはいかない」という圧力があり、今日はちょっと味噌だれで食べてみよう、などという冒険心は浮かんでこない。
長々と、わたしが味噌カツを食べない理由を述べてきたが、先日、わたしと味噌カツの関係が変化した。
あるとき、「矢場とん」が東京にもあると知った。味噌カツで有名な名古屋の店である。わたしは勝手に、こういう店は門外不出なのだと思っていたので調べることすらしていなかった。
本場の有名店の味噌カツを食べて、おいしいと思わなかったら、味噌カツは今後永久にとんかつの選択肢から外してよい。逆においしかったら、わたしと味噌カツの新しい歴史が始まる。そのくらいの気持ちで決着をつけに行くことにした。
矢場とんに進路をとる
ただし、矢場とんを探すのには少し苦労した。「グランスタ」にあると聞いていたのだが、東京駅には「グランスタ東京」「グランスタ八重洲」「グランスタ八重北」「グランスタ丸の内」「グランアージュ」があった。わたしは「グランスタ」の後ろまで見ていなかったため、しばらくグランスタをさまよい歩いた。グランスタ砂漠である。
正解は「グランスタ八重洲」だった。
日曜の午後4時ごろに到着すると、「20分待ち」と表示されていた。

未知の味を体験するために20分待つのはひとつの賭けである。しかし入口まで行くと、すんなり入店できた。どうやら「この場所に並んでいる場合は20分くらいで入れそうです」という意味だったようだ。
事前にがっちり予習していたので、迷わずリブロースとんかつ定食を頼んだ。矢場とんといえば「わらじとんかつ」が有名だが、わたしはあえてリブロース。味噌に合うとんかつがあるとすれば、それはヒレかつのような脂身の少ない肉ではないはずだ、と考えたからである。味噌だれの濃さや甘みを受け止め、なおかつ一体化できるのは、脂身を多く含む肉ではないかと推測した。
ほどなくして定食が到着した。

そして、店員さんが目の前で味噌だれをたっぷりかけてくれた。ほんの一瞬の時間だったが、永遠に味噌だれが降ってくるように見えた。むかし札幌で、ストップと言うまでいくらをかけてくれるいくら丼を頼んだことがあった。本音では永遠にストップなんてしてほしくなかったが、むこうもビジネスでやっているのだし、適当なところで空気を読んでストップと言わないといけないんだろうなと思ったが、この味噌だれも空気を読んでストップと言った方がよいのだろうか……などと思っているうちに、とんかつは焦茶色になり、規定の量をかけ終えた店員さんは次のとんかつを焦茶色にすべく、颯爽と去っていった。
これはソースとんかつにはないフローである。
少しだけ味噌だれをかけて試す、といった食べ方は店として推奨していないのだろう。これが味噌かつを最もおいしく味わうための正解なので、ただ食べていれば幸せになれる、という明確なメッセージを受け取った。

一口食べてみて、わたしは期待の何倍も豊かな味に驚いた。
味噌だれには砂糖やみりんが味噌と同じくらい入っているので、甘いだろうとは予想していた。しかし、単に甘いだけではなかった。発酵食品特有の、奥行きのある豊かさがあった。甘み、塩味、うまみ、香りが一枚のとんかつの上でまとまり、ただ濃いだけではない味になっていて感動した。
そして、わたしの読みどおり、脂身の部分がいちばん味噌だれとのハーモニーに優れていた。肉の脂の甘さと、味噌だれの複雑な甘辛さがぶつからず、むしろ互いに引きたてあっていた。
なので、味噌だれを「ソースの代わり」と思って食べると、違いすぎて少し戸惑うかもしれない。ソースとんかつの変奏ではなく、別の料理として受け止めるためのマインドセットが必要である。
たとえば、イケアのスウェーデン風ミートボールにはコケモモのジャムが添えられている。

肉に甘いジャムを合わせると聞くと、肉のおいしさが台なしになりそうに思える。しかし食べてみると、さっぱりして意外においしい。味噌カツにもそれに近い驚きがあった。ソースとはまったく別の魅力を持つ食べ物なのだ。
近所に味噌カツの店があったことを思い出す
あまりにもおいしかったため、翌日からわたしは味噌カツを食べたい気持ちに苦しむこととなった。そこで近所の「かつさと」を思い出した。
かつさとは愛知県田原市で創業し、東海地方を中心にフランチャイズを展開しているとんかつ店である。東京にも支店があり、八王子市や多摩市にもある。東京の中で名古屋に地理的に近いところがよいという判断なのだろうか。多摩センター店はわたしの近所で、以前からときどき行っていた。
しかしわたしは、メニューに味噌カツを見つけても「あるねぇ~」と思うだけで、いつもロースかつ定食を頼んでいた。愛知県発祥で、味噌カツを得意としているはずの店で、今までずっとソースかつばかり食べていたのである。申し訳ない気持ちになりつつ、今回は味噌カツ丼のジャンボを頼んでみた。

味噌カツを食べたことがない人が見ても、フーンと思うだけかもしれない。しかし、味噌カツがおいしいと知ったあとで見る、たっぷり味噌だれのかかったかつ丼はたいへん魅力的である。味噌だれが輝いて見える。
もしかしたら、おいしいのは矢場とんの味噌カツだけなのではないか、という不安もあった。しかし、かつさとの味噌カツ丼もたいへんおいしかった。
これにより、わたしの中でかつさとの位置づけは変わった。「ロースかつ定食を食べに行く店」ではなく、「味噌カツを食べたくなったら行く店」になったのである。
そして今では、とんかつ屋で味噌カツを選べる場合は味噌カツを頼むべきだと思っている。たとえば、かつやのグランドメニューには味噌カツはない。東京で味噌カツを選べるということは、その店が強い意志と自信を持って味噌カツを出しているということだろう。ならば、こちらも受けて立つしかないと思った次第である。
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椿から油が採れることにリアリティを感じていなかったのだけど、まぶしいほどに輝いている実を見かけて「こういうことか!」と納得した。そういうことではないのかもしれないが……。 pic.twitter.com/LOlFKB9TNV
— ココロ社 (@kokorosha) 2026年7月16日































































































中流でも水が少ない時期なら渡れてしまう。

































エレベーターが置けないくらい細い、ということだと思う。牛久の大仏は久しく行っていないが、たしかエレベーターがあって、シンプルな筒状だった。


































