2017年もすばらしい音楽に出会えた。毎年毎年何十万円も音楽を買うのに費やしていて、あまり振り返りたくない気もするのだけれど、こうやってアウトプットするとわたしの気持ちが多少は落ち着くのだった。
今回選んだものは、2017年に出会った音楽なので、昔のものも含んでいるけれど、5000曲以上は聞いた中から選んでいるので、参考にしていただければありがたい。
◆ディスコ歌謡の最高峰かもしれない
Sentimental Hotel / 中原理恵 (CBS Sony)
ジャケットもご覧のとおりで、LPもほしくなっている。
なお、先述の"Lovin' Mighty Fire"も強烈におすすめ。
LOVIN' MIGHTY FIRE: NIPPON FUNK * SOUL * DISCO 1973-1983
- アーティスト: VARIOUS ARTISTS
- 出版社/メーカー: BGP
- 発売日: 2016/01/01
- メディア: CD
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◆フロアが冷めていくのが想像できる、冷えきったエレクトロディスコ
Drain The Club / Torn Hawk (Unknown To The Unknown)
数年前からL.I.E.S.のいくつかのリリースで、Torm Hawkという鬼才の存在を把握していたのだけれども、最近L.I.E.S.からのリリースがなく、ある日ふと思い出して、廃業したのかな?息してるの?と思って検索したら、息をしているかどうかは不明だが、常軌を逸した傑作がゾロゾロと出てきた。中でもこの"Drain The Club"は、徹頭徹尾腐っていて、80年代末期のボディ・ミュージックを模しているようなのだけれど、腐敗した音楽ならではの生々しいグルーブ感があり、まちがいなく傑作。冒頭から喘ぎ声のループで頭が痛く、Torn Hawk関係は毎回買うと心に誓った。プロモーションビデオも本人が作っているのだけれど、ご覧のとおり、いろいろ大丈夫かしら……と思ってしまう傑作で、この曲の魅力をよく伝えている。
◆Salsoul Orchestraが現代に蘇ったかのような傑作
The Pathways of Our Lives / Mark Barrott (International Feel)2017年も大活躍したMark Barrottの新機軸。電子音楽から離れて、Salsoul Orchestraがディスコ・ダブ化したかのような傑作をリリース。
今様のゆったりとしたリズムに、美しいストリングスとピアノがかぶさり、人類の歴史を7分に凝縮したかのようなスケール感がある。アフロっぽい冒頭に、 人類のアフリカ単一起源説を想起してしまう。
今年も来年も何度も聞くだろうと思う。
◆"Starchild"は実質この人だけで作ったのではないか……という疑惑さえ生む傑作フュージョンの再発
- アーティスト: WALLY BADAROU
- 出版社/メーカー: PNM
- 発売日: 2016/10/14
- メディア: CD
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ジャケットを見ただけだと聴こうと思わないかもしれないけれど、ゆったりと涼しげなフュージョンで、すべての音がいとおしい。80年リリースのオリジナル版は2万円近くするが、2016年にやっとCD になった。こんなクラッシック然とした傑作がつい最近までデジタル化されずにいたことが驚きだし、今年もこのような音楽に出会いたいと願っている。
調べてみると初期Level42のサポートメンバーで、かの傑作"Starchild"のソングライターに名を連ねていて、たしかにこの曲も、ベースをMark King先生の手数の多いアレに変えたら、そのままLevel42の曲だし、この曲もStarchildに匹敵する傑作だと思う。
◆最近、暴力が足りない……とお嘆きの貴兄に贈る2017年型の暴力系サウンド
Sanfte Grusse / Voigt&Voigt (Kompakt)そういえば昨年ひっそりと、DAFの”Der Mussolini”が、なんとGiorgio Moroder先生のミックスでまろやかに復活しており、まあそういう時代なのだろうと思ったのだが、シンセサイザーのシークエンスで暴力を表現する方法はあまりアップデートされていないように思っていたのだが、KompaktのSpeicherシリーズの99番目のリリースで、久しぶりに斬新な音楽に出会うことができた……といっても超ベテランで電子音楽でのバイオレンスを探求し続けて25年のMike Ink先生とその弟の作品。しかも調べてみたらKompaktレーベルのオーナーだったのか……。
DAFをネバネバにして減速させたようなシークエンスに、薄気味悪いSEが重なっていて、それだけといえばそれだけなのだけれど、他では得難くて、よく聞いた。
◆PILのベーシストが描いていた21世紀音楽の青写真
East / Jah Wobble (Emotional Rescue)ズバ抜けてハイセンスな再発レーベル、Emotional Rescueから、元P.I.L.のJah Wobbleの過去のレアトラック集"The Lago Years"が出ていた。
彼のことを全然知らなかったのだけれど、初めて聞いて衝撃を受け、急いでレアでないトラックたちも購入した。
ダブが中心になっているように聞こえるが、架空の国の民族音楽のようで、何度も聞いてしまう。今聞いても斬新。
そして、いままでちゃんと効いたことがなかったP.I.L.も聞いてみたのだが、ニューウェーブという枠では語れないほど多彩で、もっと早く聞いておくべきだったと反省した。
◆ビデオが秀逸で音楽も好きになってしまう、MTV時代の音楽のレプリカ
Com Truse / Propagation (Ghostly International)
冒頭から官能的なシンセが鳴りわたっていて気持ちいいが、手堅ささえ感じさせる。80年代すぎて、ユーモアのようなものももはや感じられなくなってきているが、ビデオがとてもよい。女優がデボラ・ハリーに似ているのもうれしい。最初の30秒で話がどうなるのかはわかってしまうけれども、ミュージックビデオが好きで曲を好きになる、というの、MTV時代にはよくあったけど、ずいぶんご無沙汰していた。そういうワクワクする気持ちを思い出させてくれて感謝している。ビデオの再生数は100万を超えていて、同じように感じた人が多かったのだろうと思う。
◆大音量に包まれるように聴きたい、壮大なバレアリック・ロック
City of Glass / L.A. Takedown (Ribbon Music)イントロのシロフォンのポリリズムを耳にしただけで傑作との出会いを確信できる。
わずか5分とは思えないほど壮大なバレアリックロックで、オシャレかダサいかと言われたらダサいのだけれど、喜多郎がロックを始めていたらこうなったのでは……という魅力があり、聴くたびに心の底から感動する。
2017年デビューで今回が3作目と寡作なのだけれども、今後も新譜は必ず聞きたい。
◆シカゴの下品なアシッドハウスの現代版
Succhiamo / Succhiamo (Antinote)
先進的かつ絶対に外さないレーベル、Antinoteのリリースなので心して聞いたが、去年聞いた中で一番下品だった。
電子ノイズの隙間で、すごい男性経験が豊富そうな女の声で「スキヤモ~」と連呼するだけなのだけれど、すばらしい中毒性があって何度も聞いてしまう。80年代末期の徒花、シカゴのアシッドハウスの現代版といった感じである。聞いたら頭が悪くなりそうで、お子様にはおすすめできない。
他の曲も聞きたいが、1回リリースして終わりになってしまいそうな雰囲気がムンムンしている。
ビデオも眉をひそめてしまう出来栄え。
◆無駄なスケール感でお送りするエロ・コズミック・シンフォニー
Espacial / Susana Estrada (Espacial Discos)ジャケットの籐椅子とレッグウォーマーだけでお腹がいっぱいになるかもしれないけれども逃げてはいけない。
この曲、歌らしい歌はほとんど入っていなくて、前半はやる気のないコーラスで、後半はうってかわってやる気100%のエロティックな囁きになるのだが、それはともかく、緻密に作りこまれたエロティック・コズミック・ディスコ・シンフォニーで、他では聞けない魅力がある。
シンガーの位置づけはSamantha Fox先生と同じようで、画像検索をすると彼女のすべてを見ることができるが、スタッフに恵まれていたらしく、音楽性が非常に高い。彼女名義でリリースされた2枚のアルバムをリマスターのうえコンパイルした"The Sexadelic Disco Funk Sound of... Susana Estrada"はゴキゲンでセクシーなディスコミュージックが目白押しで重宝する。