ココロ社

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「愚痴なんだけど」などと前置きして話す人の思考回路が謎

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不適切であることを自覚しているとアピールしながら不適切な発言をする不思議な種族がいる。「これ愚痴なんだけど」「100%偏見で言っちゃうけど」などと前置きしながら存分に不適切発言を垂れ流す場合と、好きなだけ不適切発言をしてから正気にかえって「これってセクハラかな?」などと発言の妥当性について面倒な質問をしてくる場合のふたつの種族がおり、どちらも不適切であることには変わりはない。後者は言い過ぎたと反省して後で付け加えているので計画性なしと見なせなくもないが、少なくとも前者は、「わたしはいま正気ですが、これから狂います」と宣言しているのだから、計画的犯行であることは明らかである。

以前、透析患者について問題発言をしてメディアからは干されたものの、政治家としては多少湿り気味になってきたかもしれないことでお馴染みのX谷川豊さんですら、「偏見だけど」と前置きはしなかった。「100%偏見で言っちゃうけど、 自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!」とでも書いておけば、多少はマイルドな印象を与えたのかもしれない。そんなブログは注目されにくいので書く気はなかっただろうけれど。

不適切自覚アピールさんは、アピールしておけば許してもらえると思っているが、実際に許されるどころか、より憎まれるのであるが、そのことに気づくスキルを持っていないから止まらないのである。

謙遜と欠点自覚アピールはまた別の話

欠点自覚アピールと謙遜は似ているように思える。贈り物を渡すときに「つまらないものですが……」という枕詞をつけるのと似ているように思えるかもしれないが、つまらないものですが、と言われて、霧吹きで湿らせたかっぱえびせんなどをもらったことはない。本当につまらないと思っているものは贈らないからだ。
つまらなくはないと思ってはいるが、期待させてしまえば、どんなにいいものでもつまらないものに思えてしまうので、最初に「つまらないものですが」とつけておけば、禍根を生むこともない……という配慮もあって、そう言うのである。まれに、「愚痴なんだけど」と前置きして、愚痴を超えたエンターテインメントを提供してくれる人もいるが、同じ原理である。
また、不適切ではないと確信してはいるが、世の中にはいろんな考え方をする人がいるから、念のため、極論や偏見であると謙遜しておこう、という配慮をすることも問題ではない。
彼らと違い、欠点自覚アピールさんは、不適切であることを自覚しつつ、なぜか自分は不適切発言を許されていると思って発言してしまうのである。

欠点自覚アピールさんの特徴

欠点自覚アピールは、職場や友人関係のヒエラルキーで上位にいるか、実際は上位ではないがそう認識している人が多い。なぜなら、ヒエラルキー下位の人間が不適切発言であることをアピールしながら暴言を吐いたとしても、輪をかけて不適切な言葉で言い返されるだけだから。
欠点自覚アピールとは、その場での地位の高い人が、「他人の人権を侵害したいが嫌な人だとは思われたくない」と思ったときに使うとき専用の言葉である。ただ、彼らも、表立って言い返されないだけ。欠点自覚アピールをする権利と同様に、欠点自覚アピールさんの死を熱烈に願う権利もまた、日本国憲法によって万人に保証されている以上、本人が思いもよらないほど裏で悪口を言われたり、死を本気で願われたりしているのだった。

欠点自覚アピールさんの対処法

欠点自覚アピールさんへの対処法は大変簡単である。問題であることを自分で認めているのだから。

「100%偏見で言っちゃうけど」
→「そうですか偏見ですか……。話は変わりますが、ブックオフの剥がれにくい値札、ブックオフのレジ前で売っている値札剥がし液を使えば簡単に剥がれたのですが、最近はマッチポンプみたいと思ったのか、売らなくなったようで残念です……。」


「愚痴なんだけど」
→「そうですか愚痴ですか……。話は変わりますが、 自転車で坂道を降りるとき、進行方向の逆に漕いだら、小さな反乱を起こしているような気分になれてスッキリしますよ!」


「極論だけど」
→「そうですか極論ですか……。話は変わりますが、ラーメン二郎ってあるじゃないですか、あの名前、『二』の郎じゃなくて、『次』の郎が本当の名前だったんですが、看板の業者さんが間違えて『二』の郎にしてしまって、これでいいやってなってその名前になったみたいです。わたしは友人とラーメン二郎を食べながらそのエピソードを聞いたのですが、感動で胸がいっぱいになり、ラーメン大を残してしまったんです。」


前置きの段階で、不適切であるという宣言に沿って、発言の主旨については一切触れる必要はない。彼らの本題に触れてしまうと味をしめてしまうし、そもそも、先人たちが甘やかした結果、欠点自覚アピールさんが誕生したのである。

欠点自覚アピールをして、仮に言い返されなかったとしても、好感度が大幅に下がるのに、なぜ口に出してしまうのかのか、大いに謎である。
自分から自分の欠点を言っておけば、相手から指摘されるより自分が傷つかないと思っているのかもしれないが、そんなややこしい脳波を流すくらいなら、最初から問題発言をしなければいいだけのはず。
地中からわざわざ出てきて干からびて天に召されてしまうミミズと同じくらい謎めいている。もうすぐ春だ。


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