久しぶりに本屋に行ってとても感激しました。ミステリー小説が、いつの間にか新しい形態に変わっていたからです。ちょっと前まで、ミステリー小説と言えば、ページをめくりながら謎解きをしていくものでしたが、これからは、「その本が世に存在すること自体がミステリー」というのが主流になりそうです。
たしかに、本の中の謎解きよりも、現実にある本の謎解きの方がリアルだしスリルがあります。そんなメタ・ミステリー小説の草分けといえば、ご存じ、『国家の品格』。日本語で書かれ日本で売られているのになぜか「すべての日本人に誇りと自信を与える」とか書いてある。うーん…謎です。この本を読んで、いつ誰に日本人であることを誇ればよいのでしょうか。会社の中心で「俺は日本人だ!」と叫んでも「俺漏れも」と答えが返ってくるだけだろうし…この本に書いてある内容がいったい誰のために存在するのかが(いい意味で)不可解です。さらに200万人以上の人間がこれを読んでいるという事実も我々を(いい意味で)戦慄させます。こんな(いい意味で)意味不明な本を読む人が200万人以上いるということは、すなわち通り魔などの(いい意味での)凶悪犯罪の予備軍が200万人以上いるということです。買ったのが200万人なので、頑固オヤジを誇らしげに名乗る上司が「これ読んでみなよ」と部下に貸したりした日には、もっと数が増えるかと思うと、(いい意味で)身の毛もよだつので、一刻も早く超法規的措置で読者を「日本をよくした罪」などの(いい意味での)罪状で収監し、作業所でタンス作りに精を出してほしいところですが、そんな妄言はともかく、id:gotanda6さんこと速水健朗さんの『タイアップの歌謡史』を読んだので報告させていただきます。
- 作者: 速水健朗
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2007/01
- メディア: 新書
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また、むせかえるほどの情報密度に感激しました。世代にもよるかもしれませんが、ページをめくるごとに「へぇー」と言えるので、最後まで気が抜けないのですが、もうちょっと出し惜しみした方がいいのではないかと余計な心配をしてしまいました。たとえば140〜141ページだけでも4回へぇ〜って言わされる。
(1)ホンダ・シティの開発チームの平均年齢は27歳。広報チームも20代。
(2)ニューヨークまでわざわざ行って、結局マッドネスを採用(輸入レコード屋とかに行けばよかったのに…)
(3)実質二日半で録音・CM撮影・ポスター撮影をした
(4)あの曲の作曲は井上大輔
タイアップといえば、最近、映画『ネバーエンディングストーリー』のテーマソングが、何かの商品のCMで使われていました。まあ、何の商品か覚えていない時点で終わっていると思うのですが、どうやって企画書を書けばそんなタイアップ・オン・タイアップの企画が通るのか、サラリーマンとしてはそれが知りたい。そのメソッドが身につけば、どんな企画でも決裁してもらえるのではないかと思います。あと、自分の好きな曲がどうでもいいように使われたらすごく嫌な気分ですよね。いや、別に「ケイコとマナブ」のCMでVan McCoyの"The Hustle"を使っていて気分が悪くなったとか、野島伸司のせいで森田童子が聴けなくなったとか、Loletta Hollowayを聞くたびに小沢健二を思い出す刑に処せられて何とも辛いとか、そういうことは全然考えていなくて、一般論として、「音楽が別のものに使われていて、それがアレだった場合、音楽の価値を下げてしまう」という現象について言いたかっただけです。そんなふうに、音楽が自立できないという状況を悲劇であると考えてしまう硬派なぼくとしては、『タイアップの歌謡史』のポジティブなまなざしが、とても新鮮で面白かったです。