もともと小説があんまり好きじゃないというのもあると思うのですが、最近、面白いと見せかけて面白くない小説が多すぎです!面白人間と目されている人が、いざ筆を執ったら、なんか大文字の「文学」を信仰しているような筆遣いで書いてるのがまさかって感じでムニャムニャムニャ21世紀になって何年経ったと思ってるんだムニャムニャムニャ…
まあ、具体的に誰のどの作品が面白くないかというのを書くと、せつなさが加速するだけなので書きませんが、こういう笑いのない乾いた現代をたくましく生き抜くためには、ローレンス・スターンの『トリストラム・シャンディ』こそが必要だということを覚えておいていただければ幸甚です。
18世紀の作品で、漱石も読んでて大いにインスパイアされたはず。漱石の全集持ってたから、ちょっと読んでみて、後日感想を書こうと思います。岩波文庫だと全3巻で、語り手であるトリストラム・シャンディが自分の生い立ちについて語るはずなのだけれど、他にも言いたいことが多すぎて(a.k.a.リーブ21シチュエーション)、トリストラムが生れるシーンにたどり着くまでに何百ページも費やしている。と、ここだけ取り上げてしまうと、「ハッハーン…逸脱と迂回ですか」と片づけられそうだけど、挟まれるエピソードが全部笑えるところが素晴らしい。トリストラムは、自分の生涯について簡潔に語りたいと願っているのだが、書いているうちにいろいろ思いついて、書かずにはおれないといった調子で、時々反省したり開き直ったりしながら、面白話を断続的に続けるのです。この作品と並べて語られがちなのが、フランソワ・ラブレーの『ガルガンチュワ物語』『パンタグリュエル物語』だと思うのですが、全然違います。ラブレーは、まあ、いろんな話をするのですが、すべて同じ水準、同一平面上であれやこれや言うわけですが、スターンは、主人公が自分語りをしていたと思ったらいつのまにか一般論になったり…と、さまざまな水準を行ったり来たりします。話としてはわりとみみっちい話なのですが、世界を描ききっている印象があります。
「さまざまな水準を行ったり来たりする感じがイイ!」と思ったのは、ベルグソンの『物質と記憶』の、純粋過去とかそこらへんの概念を読んだときで、それからロブ=グリエなどを読みながら自分で実践していたのですが、この小説をもっと早く読んでいれば…と思いました。こんなのが読みたかったし書きたかった。
まあドン・キホーテもそうですが、初期に荒唐無稽で面白いものが出たら、もう書く物なんてないようなぁ…という気がしました。
しかしこれ、69年に出て、90年でまだ8刷。絶賛絶版中!…だったはずだけど…復刊?とにかく必読!どうせ誰も読まないだろうけど…
- 作者: ロレンス・スターン,朱牟田夏雄
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