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ココロ社

主著は『モテる小説』『忍耐力養成ドリル』『マイナス思考法講座』です。連絡先はkokoroshaアットマークkitty.jp

グリーンプラザ新宿は、わたしにとっての宇宙船だった

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新宿にグリーンプラザというカプセルホテルがあり、何度か泊まったのだけど、残念ながら16年の年末で閉館となってしまった。
建て替えではなく、事業が終了するようなのだが、繁華街に隣接していて土地の価値は高いとみえ、間髪を置かずに取り壊しが始まっている。


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フォーマットに○をつけるようなのを見ると、「挿入」→「図形」で楕円形を選んで貼るのではなく、普通に○でないところを消せばええんちゃうのと思ってしまうが、それはさておき、わたしはここを、なんとなく家に帰るのが面倒なときや、終電を逃したときなどに使っていて、実際は三回くらいだったと思うのだが、寝床がなくて困ったらここにくればいいという、精神的支柱のような存在だったので、ちょっとした喪失感に苛まれている。
カプセルではないホテルなら近辺にごまんとあるが、家に帰るタクシー代よりも高いと退廃的な気分になってしまう。近くに家があるのに普通のホテルに泊まったときの夢は、おそらくマリー・アントワネットになった夢で、ひんやりとしたギロチンの感触を感じたところで目が覚めたりするのだろう。いっぽう、カプセルホテルなら、それほどのぜいたくではないので、せいぜい、コンビニエンスストアでトイレットペーパーを買う夢を見る程度のはずだ。

中は創業34年ということもあり、それなりに老朽化しているが、当時考えた宇宙船のようなたたずまいで、わたしはそれが大好きだった。古いカプセルホテルの多くは宇宙をイメージしているか、イメージした結果宇宙になってしまったかのどちらかだが、最近のカプセルホテルは宇宙を志向していないところが残念である。
カプセルを、非人間的な居住環境と考え、それを緩和するため、カプセル内を木目調にしたり、10センチ程度大きくしたり……などという虚しい努力をするのではなく、カプセルは宇宙船なのだから狭くて簡素なのがあたりまえであると強弁してほしいし、朝起きたら火星に着いていると信じさせてほしい。


いつも、人がいないのではないかと思えるくらい静かだった。実際あまりいなかったのかもしれず、それが事業終了の原因だったのかもしれない。
音を立てないよう注意してカプセルに入る。


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入り口のカーブがたまらない。
カプセルからは向かいのカプセルの入り口が見える。サラリーマン……ではなくてクルーたちは半分くらい入っているだろうか。
ほかのカプセルホテルがそうであるように、グリーンプラザもサウナなどが併設されていて、ホカホカになった状態でカプセルに入るのがよいのかもしれないが、そもそも風呂に入るくらいの気力があったら普通に帰宅しており、それが嫌だからカプセルホテルに来ているので、来たときの姿でカプセルに入り、カプセルの中で芋虫が蛹になるときのように身をくねらせ、室内着に変身していた。

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鏡は円形。作るなら長方形の方が安くて大きくなるはずだが、円形なのは、ここが宇宙船の中であることの証左である。

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このテレビで地球の様子を知ることができる。
地球人は頭を下げてばかりのようで、宇宙に出てきてよかったと思う瞬間である。


わたしはカプセルホテルではツタンカーメンみたいにして寝るのが好きだ。
家でもそうしていることが多いのだが、宇宙を飛行中なのだから、不慮の事故により宇宙船ごと冷凍されたりした場合の見栄えにも配慮し、やはりそれらしきポーズで寝なくてはいけない。地球人は寝相がいいと思われたいのだ。


閉館すると聞いて、もっと泊まっていればと残念に思ったが、あとの祭りで、グリーンプラザ丸はブラックホールを目指して旅立ってしまった。


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横にそびえ立つのは、個室でありながらカプセルホテルに泊まったときのような心地よい疲労感が得られることで人気のアパホテル。


グリーンプラザ新宿がなくなってしまった今、気軽に入れ、宇宙を感じさせてくれるカプセルホテルを探さなくてはならないと思っている。



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