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ココロ社

主著は『モテる小説』『忍耐力養成ドリル』『マイナス思考法講座』です。連絡先はkokoroshaアットマークkitty.jp

学費援助サイトを叩いた人も、ひとり900円くらい援助していたことになる


こんにちは。
studygiftという、「学費を援助してください」というサイトがオープンとともに炎上しました(写真左)。企画そのものだけでなく、学費が出せなくて困っている坂口さん自身についてけっこうな言われようだったようで大変お気の毒です。
「援助してください」という希望について、わたしたちが取れる行動は、「援助する」「援助しない」の二択のはずなのに、「援助を希望するなと説教する」という、三つ目の選択肢を選ぶ人がいらっしゃいました。まあ嫉妬のあまりそうしたくなる気持ちもわからんでもないけれど、叩くという行為が、最終的には自分の首をしめることになるかもしれないのに、と思います。

坂口さんは十分にがんばりやさんだと思います

坂口さんのあれを乞食呼ばわりするのはどうなんでしょうね。ぼくの場合、仕事は就職してから嫌というほどできるし嫌すぎて自殺してしまうかもしれないと思ったから学生時代は楽しいことだけしようと思って、本を読んだり音楽を聞いたりして過ごし、ほぼアルバイトはしていませんでした。そんなのと比べると、「学費と生活費を奨学金とアルバイトだけでやりくりしながら大学に通って」いる坂口さんはすごくがんばり屋さんやなーと思いますし尊敬します。ぼくもいま、内的必然性としては坂口さんと同じくらいお金がほしいです。今月は引っ越しをしたり、保険対象外の差し歯を入れたり、昔のミシン台を改造したデスクを買ったり、ドヤ顔で友だちをすてきなレストランに連れていったりするなど、お金を使いすぎたのですが、坂口さんの何倍も受け入れがたいぼくの話はともかく、今回の援助のお願いに共感できなかったとしても、静かにブラウザを落とすなり、「成績が悪くて奨学金を打ち切られた大学生が90万円を手にしているこの地球の裏側では乳幼児が毎日命を落としており、この90万円をアフリカに送金すれば分娩セットで約3000人の赤ちゃんを無事に産むことができるのだが……人の命って重さがいろいろ……みんな違ってみんないい!」などと思いながらも小規模な罪悪感に苛まれ、ワールドビジョン(写真右)にアクセスして5000円ほど単発の募金をして罪悪感を和らげるなりすればいいだけであって、そこで「がんばりが足りない」などとお説教をするのは筋違いなのではないかと思うのです。残業自慢を一次変換するとこういう感じになるんでしょうかね。


―とはいえ、インターネットの神様は坂口さんや、企画された方を見捨てていませんでした。日本は森総理(当時)が神の国だと言っていたわりには守られている感がなく、ほんとうに神の国なのか、伊勢神宮の中はもしかして…空っぽ?…あと、神の存在が疑わしくなったときって、だいたい「それは信仰が薄いからだ」という信じる側の問題にすりかえられてしまう宗教ってビジネスモデルとして秀逸やなと感心したりもするわけですが、少なくともインターネットには、神様がいることが判明したのです。彼女は無事90万円を手中におさめることに成功したようです。素晴らしいことだと思います。素晴らしいと思うところはたくさんありますが、いちばん素晴らしいと思ったのは、5000円出した人の声で「わたしも早稲田にいましたが〜…」という声がいくつもあったことです。たかだか4年(+α)在籍した集団について、未来永劫にわたってセンスオブビロンギングをフィールし続ける粘り強さと、その粘り強さの背景にある、卒業したあとの4年以上になるはずの社会人生活の……いつのまにか脱線してしまいましたが、90万円、このお金は、一見するとサポーターさんたちによって提供されたように見えますが、この企画にネガティブなコメントをつけることで、この企画を地道に支えた営業マンの存在がなければ成功しなかったでしょう。

坂口さんや企画した方を叩いた人は900円援助したことになります

というのも、叩こうが賛同しようが、話題になることで彼女のサイトにはどんどん人がくる仕組みになっているからです。たしかにネガティブなコメントとともに紹介したら、ノーマルな感性の人にはバイアスがかかるのですが、そもそもそのバイアスが不当なものであれば、むしろ味方をしたいという心理が働きますし、仮に正当な批判だったとしても、1000人に1人、アブノーマルな感性を持っている方がいたとしたら、手段を問わず20万アクセスを達成しさえすれば200人の援助が受けられるのです。
今回の企画、坂口さんが希望していた90万円、賛同者が5000円ずつ払うことになっていますが、これをふつうのビジネスと考えると、営業担当1000人で割って、ひとり900円の売り上げを達成したことになります。もちろん人数は前後するかもしれない、たとえば2000人かもしれませんが、彼女にランチをおごったくらいの感じでしょうか。また、この企画、援助の中に75135円の「システム利用料」が含まれているので、ひとりあたりの売り上げのうち、約75円は企画した会社にまわります。言われ損にはならなくてよかったです。坂口さんもサイトを企画した方も、びっくりしたかもしれないけどお金を手にしていると思うと心が安らぎます。

今回の企画を叩いた方々には、これからも営業マンとしての手腕が期待されています

今回の企画を叩いていた人は、気に入らない人が90万円を手にする企画の営業マンとして無料でサイトの宣伝をした挙げ句、言論空間をちょっと狭くして、もし自分がインターネットで何か言いたくなったときも言いにくくしてしまった、という残念な結果となりました。残念な思いをしたいという特殊な性癖をお持ちの方ならそれでいいのですが、もし意図せずそうなったのなら泣き面に蜂ですし、嫉妬に駆られて妙な行動に出ると、もっとつらい目に遭ってしまうという、世の中の真理が垣間見えてしまいましたが、そもそも、「大学の学費がないんです」という悩みの表出は、日本レベルでは「そもそも学校に行けません」という悩みであったり、世界的なレベルでは「そもそも今飲む水もない」「明日生きているかわからない」という悩みの表出と共存していて、そのなかで大学の学費の援助を求めても協力者はなかなか出ず、ネットを通じたあしながおじさん的企画は、援助する対象に感情移入させるための周到なプロモーション戦略があったとしても困難でしょう。今後、この企画がうまく回っていくのか心配です。


―つまり、このstudygiftという企画の今後は、不機嫌な営業マンさんたちのがんばりにかかっているのです。


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