読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ココロ社

主著は『モテる小説』『忍耐力養成ドリル』『マイナス思考法講座』です。連絡先はkokoroshaアットマークkitty.jp

性格の暗い人には除湿機がおすすめ

f:id:kokorosha:20160711210822j:plain
気づいたら生まれてずいぶん時が経っていた。物心ついたときから性格が暗かったが、きっと大人になると明るくなるだろうと楽観していた。しかし、「性格の明るい人物を装う術」や「暗いなりに人生を楽しく過ごす術」に長けただけで、もとからの性格の暗さは一切変わらなかった。仕方ないのでそのまま生きている。
きょうはそんな薄暗いオッサンからの四次元経由のアドバイスに耳を傾けてほしい。「除湿機はいいぞ」という話である。申し訳ない。先輩風を吹かせてしまった。「除湿機はいいですよ」という話である。

加湿器は持っていても除湿機は持っていない、という人は多い。加湿器はもともと値段が安いし、ないと風邪をひきやすくなるが、除湿機は安いものでも1万円以上するし、夏は湿って当たり前だと思うなら、特段不自由はない。除湿機のよさは除湿機を手に入れてからではないとわからないのが、すすめる側としても歯がゆいところである。しかし、とくに性格の暗い人間にとって、除湿機から得られるものは多い。なぜ性格の暗い人間にとって、除湿機が福音となるのかを説明していこう。


部屋が清潔になり、ネガティブな雑念が生じにくくなる

性格の暗い人間は、部屋の壁にカビやシミができたりすると、それを凝視し、いままで出会ってきた嫌な人の姿をそこに見出してしまう。なんとも暗いロールシャッハテストである。あのカビは、機嫌が悪くなると、「なぜわたしが怒ってるかわかる?」という珍妙なクイズを出してくる元恋人。その隣のカビは、同意する趣旨のコメントをするときですら、「いやいや、それは」と口を開く元友人。向かいのシミは、仕事のメールの同送を忘れると、仲間はずれにされたと勘違いして逆上する元同僚……。
それだけではない。湿度が高いと害虫が発生する危険性が高まる。特にダニは、発生したらみじめな気持ちになる害虫ナンバーワンだし、布団を天日干ししたくらいでは死なない。某社の、刑事のような名前のダニを吸いこむというのが売り文句だった掃除機も、効果が大してないことを製造元が告白していた。ダニの根絶は難しいが、少なくとも、湿度が低ければ、繁殖しないことはたしかなのである。この「根絶できないが、増加を食い止めることができる」という言い回しは、いかにも性格の暗い人が好きそうなフレーズだし、実際わたしも大好きだ。

サラサラで心地よく、悪夢にうなされる確率が減る

徐々に寝苦しくなってくるこの季節。気温だけでなく、じっとりと汗をかいてしまうとより寝苦しくなる。汗だくで寝ているときに見る夢はろくなものではない。「地味なドッキリ」というコンセプトの番組にはめられて、目覚ましの時間を30分ずらされて遅刻してしまい、しかも視聴者もあまり笑ってくれていないという夢、伝票締め日の翌日に引き出しの奥からアリの大群が請求書を担いで現れる夢、ヒトラーの家に牛乳を配達していたことを理由に戦争責任を問われる夢、公園でちびっことミニカーで遊んでいたら、ミニカーのドアを壊してしまったので、そっと取り付けてごまかしてしまった夢など、ひどい悪夢ばかりである。
いっぽう、除湿機を使っているときにベッドに横たわるのは大変心地よい。ふとんのすみずみまでサラサラ。エアコンと併用するとさらなる快眠が待っている。このときに見る悪夢はせいぜい、「南国のビーチサイドで食べているマンゴーかき氷のマンゴーの量がやや少なかった」という程度の夢なのである。

日々除湿の成果が現れ、不確実な人生のなかで確実に前進しているものがあることで安心できる

長々と除湿機の長所について語ってきたが、ここからが本題である。除湿機を回していると、確実にタンクに水が溜まっていく。しかもそれは、思っているよりもはるかに大量の水で、部屋に帰ってきて、タンクにたまった水を捨てるときには、ちょっとした達成感がある。
たとえばTwitterで攻撃的なコメントをくださった方のプロフィールを見に行ったら「ミサンドリー強め」と書いてあって、「自覚してるなら直してからツイートしてくれよ」と思ったその瞬間も除湿機のタンクには着実に水が溜まりつづけているし、電車で柔軟剤ファミリーに取り囲まれて頭痛がしたその瞬間も、除湿機のタンクには着実に水が溜まりつづけているし、市販のヨーグルトを買って、おいしかったので蓋をなめようとしたらそれを見越したかのようなコメントが蓋の裏に書いてあることを見つけたその瞬間も、除湿機のタンクには着実に水が溜まり続けている。これはまごうことなき事実であり、わたしたちは生きているだけで前進していて、そのことは水の量という形で常に可視化されるのである。


積み上げてきたことが一瞬にして台無しになってしまうことも多い今の世の中。学力やスキルを磨いても、まったく役立たなくなることもざらだし、就職活動や転職活動に一度失敗したら、這い上がるのは困難。除湿機を入手したところで、その現実はまったく変化しないが、そんな世の中を生きていくお守りとして、自分が確実に前進していることが感じられるという、その一点において、除湿機の導入をおすすめする。


twitter.com