ココロ社

主著は『モテる小説』『忍耐力養成ドリル』『マイナス思考法講座』です。連絡先はkokoroshaアットマークkitty.jp

知られざる東京・稲城の名所たち。府中までの散歩道は宇宙コロニーに住んでいる気分になれて最高

首都圏在住の人でも、稲城に遊びに行ったことのある人はかなり少ないのではないかと思う。住んでいる人に聞いても「何もないとこだよ」と返ってくる。地図上で見てもないように見えていたこともあり、わたしも最近までは失礼ながらそう思っていたのだが、ある日の夕方、散歩する場所に事欠いて思いつくまま歩いていたら、素晴らしいトンネルに出会い、そのとき以来、「ちょっと稲城に行くか」と思うようになった。そして、他にもすばらしい場所をいくつも発見し、稲城から府中へのウキウキお散歩ルートを開拓したので、ここで報告させていただきたい。
 
今回のルートはこちら。
(1)宇宙コロニーみたいなトンネル(2)城山公園 竜の池(3)城山公園 ファインタワー(4)是政橋展望スポット(5)是政橋(6)郷土の森公園(7)このへんに出店があるときはある(8)府中市郷土の森博物館(9)旧府中町役場庁舎(10)旧府中尋常高等小学校校舎(11)まいまいず井戸

 

 
もし1日で上記コースを歩きたい場合は、(3)のファインタワーは5~10月の日曜祝日のみ営業で、開門が12時半。最後の郷土の森博物館は16時が最終入館時間なのでご注意いただきたい。(orファインタワーは別の日にするとか……)
 
今回の起点は稲城駅。

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プラットホームがゆったりしていて、武蔵小杉に分けてあげたい感じである。
駅のまわりに繁華街のようなものはない。住居に特化されているから飲食店はあまり必要ないのだろう。
 
駅の北口を出て道なりに進む。
ここには電車は通っていないのに、上にあげた地図上には線路がある。武蔵野貨物線である。
 

無骨なトンネルの上に高級住宅地が形成されているという絶景

わたしが最初にこの風景に出会ったのは、夜に調布から都道19号線を歩いていたときのことである。暗闇の中に得体の知れないトンネルが忽然と現れた。しかも、トンネルの上は家族団らんを思わせる住宅街の温かい光。まったく予期しないタイミングですてきな風景に出会えて驚いた。

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昼間も昼間でよござんす。無骨なトンネルが唐突に現れるこの感じ……。
銀河鉄道とかそういうのが出てきそう。
この感動を十分にお伝えできているか不安である。

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ただ無骨なトンネルがあるだけでも素敵なのだが、その上で、何事もないかのように―実際何事もないのだけど―人々の平和な暮らしがある。このコントラストは少なくとも都内では見かけたことがない。
 
トンネルの脇の階段のようなものがあるので、ここを歩けるのではという期待が醸成されてしまう。

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まわりを一周してみたのだが、すべて入り口は封鎖されていた。

 正面は、アミアミがあるので、RX100シリーズなどのコンパクトカメラを網目にくっつけて撮るといいと思う。

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電気系統がややこしいけど、これはいろんな種類の電車が通るからかもしれない。

実際一般の車両でも、ホリデー快速鎌倉号(南越谷から鎌倉という夢のようなルート)が通っている。

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 ふと振り向くとナイスな鉄塔もある。これは夕方に行ったとき撮ったもの。

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ひとしきり、トンネルのまわりを歩き回ったら次の名所へ行こう。駅からさらに離れる方向に進んでいく。
 

謎のセンスのオブジェと和製スチームパンクみたいな鉄塔

次に訪れたのは城山公園。

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この写真だけを見ると壁が唯一のセールスポイントである寂しい公園に見えてしまうかもしれないが、わたしの中では都内の公園の中でもトップクラスのプレイスポットである。(ここでのプレイ=歩くor観察する)
 
まず、「龍の池」がよい。謎のアジア風のオブジェがあしらってある。f:id:kokorosha:20180605205305j:plain
 
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昔は水がたっぷり引いてあったはずだが、今は干からびそうである。
この池が実際どうなのかは知らないが、東日本大震災後、節電のために噴水などが止まってしまい、大震災からかなり経って復興はしたものの、噴水だけは停止したままで、もしかして噴水を止める口実がほしかったのかなと思う。
 

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池の裏側に、この苦境でも職務をなんとか果たそうと奮闘している龍がおり、応援したくなる。
 

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この池から謎のタワーへの長い階段が通じている。
ファミコン時代のゲームの世界を歩いているような喜びに満たされる。
 
 

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このタワー、デザインがさきほどのトンネル並みに無骨で惚れ惚れする。しかも、いつ行ってもほとんど人がいないから、高いところが好きならゆっくりできるし、高いところが苦手なら恐怖感が倍増する。
 
階段も、風通しがよすぎてスリル満点。

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展望台は、当然ながら柵が用意されているものの、あまり高くないし、ガラスで保護されているわけでもないので、なかなかにスリリングである。そのかわり、写真が撮りやすい。
 
こちらは東京の東部。

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代々木のNTTドコモのタワーとスカイツリーが並んで見える。

 

反対側は多摩ニュータウンである。
ニュータウンといえば、同じ建物の団地が横一列というイメージだが、近年は、このように地形を活かした建物が多い。

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このあと、多摩川方面に向かうが、公園と呼ぶにはあまりにもありのままの自然で、東京都だよね、と自問するはずだ。

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にぎやかしにシマヘビも登場。つやつやしていて、脱皮したてなのか、単にきれい好きなのかどっちだろう。

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多摩川の橋の中でも異形の並列斜張橋、是政橋

公園を出て、多摩川方面に目をやると、白っぽい巨大建築が見える。先ほどのトンネルやタワーとはずいぶん雰囲気が違う。

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奥の橋は是政橋。斜張橋が並列で並んでいるので迫力満点である。
城山公園から見下ろせるので、インスタ映えすると思う。(「インスタ映え」を履き違えた意見)
 
手前の橋は南武線。是政橋の前にあるから注目されていない風味だけれど、コンクリートだけの橋だと不思議な印象である。

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並列でかかっているだけあって、歩道もゆったりしている。
 

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謎の水色部分だけれども、おそらく両側のポールを連結させることで安定させる意図があると思われるし、見ているこちらとしても気持ちが安定する。

 

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黄金都市・府中の公園に歯ぎしりする

橋を渡り終えたら黄金の都、府中市である。何が黄金かというと、「府中郷土の森」が、さきほどの城山公園のたたずまいとは異なる、坂のない、水に満ちた公園だからで、たとえばこのように噴水はやりたい放題。

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また、黄金の国の市民たちの憩いの場としても使われていて、いくつか屋台も出ている。近辺にご飯を食べるところが少なめなので、ここで何か買って公園で食べるのも楽しい。
 

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なお、先日訪問した折に、二郎系まぜそばの店を発見した。実はそこまで空腹ではなかったのだけれども、二郎系まぜそばを公園で食べることができるチャンスを逃すわけにはいかなかった。
 

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全体的に茶色い絵柄になってしまった。
 

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麺はさすがにすみやかに提供するため平麺であるが、濃い味つけは予想を裏切らなかった。
 
いつもいるとは限らないので、もし、好みの屋台に出会えなければ、公園内にある「レストランけやき」などに行ってみるのもいい。公園のレストランなのに結構なメニューの数でびっくりするはずである。
 
 

江戸東京たてもの園を小さくしたような場所

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そしてこの旅のクライマックスは府中市郷土の森博物館。
 
ここは屋内展示と、移築された建築のどちらも見逃せない。
 
 
屋内展示は、大国魂神社のくらやみ祭を中心に、府中の今昔がわかる。
ちなみに昔は石器時代から始めていただけるのであった。
 

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土器なども紹介しているが、石棒を見つけるとついつい撮影してしまう。

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先端部分が二段になっているのだが、これは石棒としてのデザインとしてこうなのか、それとも男性のそれがこうあってくれたら最高と思われていたのか、タイムマシンに乗って聞いてみたいところである。
 
また、現代編では、三億円事件の展示もある。
ただ、犯人が捕まっていたりはしないので、展示物があんまりない……。

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この博物館の特徴は広大なジオラマ。23区では体験できない迫力。
この風景を脳裏に焼きつけてJR府中本町駅or京王線府中駅までの道を歩くと楽しい。
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博物館のトリはサイノカミ。邪悪なものが入ってこないようにする結界のような働きをするとされるが、結界としての効力を実感させるためか、ド迫力の大きさで、アール・ブリュットのようである。

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また、博物館内に移築された建物が豪華で、江戸東京たてもの園に行った気分になれる。
 

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これは府中尋常高等小学校。

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このタイプの机、むかし、机の上を開けていろいろ収納できていいなーと思ってアンティークショップで買いそうになったが、原稿を書いたりしたら肩が凝りそうなので諦めたという経緯がある。2in1タイプの机、わたしなら、隣に好きな子がいたら勉強にならないと思う。昔の子供たちはそのへんはどうしていたんだろう。
 

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紫外線や湿度の管理を完璧にしていたせいか、昨日書かれたかのような錯覚に陥る。
美しい字というのはそれだけで説得力を持つもので、よし竹槍でB29を撃墜や……みたいな気持ちになってしまう。
 
 
府中町役場の和洋折衷ぶりも見逃せない。

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入ると広々としたカウンターがある。

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無駄に住民票の写しなどを請求してしまいそうなインターフェイスである。

あと外の人がくつろぎすぎて感動した。

 

町長の間。いまの感覚だとSurface1台置けるスペースがあれば十分だけれど、予算やら何やらの表もすべて手書きの紙になると、これだけゆったりした机が必要なのだろう。

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床や天井など、細かいところまでよく見ると意外な発見がある。

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天井に……孔雀!
 
最後にまいまいず井戸で〆

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復元した井戸なのだけれども、ぐるぐる回って降りていくと、関東ロームを掘って掘ってもなかなか水が出てこない大変さを実感することができて最高。
 
 
わたしの歩くペースで紹介したけれど、そこまで歩かない人は前半後半で分けて別の日に行ってみるのもいいかもしれない。
稲城に行ったことがない人は、東京にこんな面白い場所があるなんて、と感激するはず。わたしは稲城駅に降り立った途端に胸が高鳴る体になってしまった。みなさんにもぜひ行ってみていただきたい。