ココロ社

主著は『モテる小説』『忍耐力養成ドリル』『マイナス思考法講座』です。連絡先はkokoroshaアットマークkitty.jp

知られざる世界レベルの古墳地帯、総社&岡山が貸切状態で最高だった

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アイキャッチの画像から地味すぎて、キャッチできるのか不安なのだけれど、これを読んでくださっている方のアイにおかれましては、キャッチさせていただいたということになり、感謝の気持ちでいっぱいである。
 
今回は岡山の話。
中国地方への旅行といえば、宮島や広島市内を思い浮かべる人が多いはずだ。あるいは山口の秋芳洞を想う人もいるかもしれない。岡山に旅行に行こうと思う人は少なく、たしかに観光客の数は広島の1/3に満たない。わたしも、岡山に旅行に行ったことはなかったのだが、念のため、地図を調べてみると思いのほか見どころが多いことを発見し、この2年間で3度ほど行ってきた。3回に分けて紹介していきたいと思う。
 
今回の行程は、東総社駅から降りて、岡山駅方面に戻るように歩いていく。東総社は岡山駅から電車でわずか30分程度のところにある。
考えなしに行ったのだが、地図の情報からは想像できないほどの感動があり、史跡が好きな人は一生の思い出になるので、ぜひとも行ってみていただきたいと思う。
足が棒になるまで歩くのは勘弁と思う方=ノーマルな方は、総社駅からレンタサイクルも用意されている。
 
(1)備中国総社宮(2)作山古墳(3)備中国分寺(4)こうもり塚古墳(5)千足古墳(6)国指定史跡 造山古墳

 
この地域のいちばんの魅力は、
 
敷地内に入れる墳墓としては世界最大級の、「造山古墳」がある
 
……という点である。
 
日本最大にして、世界最大でもある大仙古墳(a.k.a.仁徳天皇陵)。ピラミッドも大きいが、体積でなく長さではかると日本の前方後円墳の独擅場なのだけれども、やんごとなき方の墓にあたるため、立ち入りは禁止。その大きさを感じるためには、古墳の近くの歩道橋から眺めたり、柵の外を一周するしかないのである。古墳にラブホテル街が隣接しているさまも興味深くて、大仙古墳は大仙古墳で訪問すべきなのだが、日本で4番目の規模である造山古墳には柵がないので、前方後円墳の巨大さを足で確かめることができるのである。
また、世界三大墳墓の残り2つと比較しても、造山古墳はクフ王のピラミッドをしのぐ大きさで、また、秦の始皇帝陵とほぼ同じ長さである。敷地内に入れる墳墓としては世界最大級ということになる。それが貸し切り状態で楽しめるなんて夢のようである。
 
―以上の文により、こちらをご覧になったみなさまに、総社の風景に興味を持っていただけたと確信したので、東総社駅から歩きながら順に紹介していこう。
 

お得感最高の備中国総社宮

東総社駅を出てすぐ、総社市の由来にもなっている総社宮がある。

「総社」とは、その国の神を一箇所に集めて巡礼を簡略化した神社である。四国八十八箇所めぐりを一箇所でできるようなのと同じ考え方だが、そもそも、足を使って巡礼することに意味があるはずで、そこまで簡略化したいなら、そもそも神道を信じるのをやめればいいのでは……などという身も蓋もない考えが浮かんだりもするけれども、巡礼は必要だが本気で巡礼したくないという気持ちも人間らしさというものである。

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ふつうの椅子が置いてあるところを見ながらお賽銭をチャリンと入れるのが楽しい。
 
ずいぶんマンガ的な表現だと思ってよく見たら鳥の糞だった。

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総社宮そのものはさほど大きくはないのだが、得られる(とされる)霊験に比例して、回廊~拝殿に立派な屋根がついていて、初詣の時期などには混雑すると思われる。霊験と神社の物理的大きさは必ずしも比例しないのであった。
 
 
総社宮を出たら、田畑と住宅地がミックスされた中を歩く。
古い蔵のような建物を見かけた。

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壁が剥がれていて、土壁の建物の解剖図のようになっていてありがたい。
 
 
そして次は古墳。今回は3つの古墳を訪問するのだが、最初は作山古墳。この古墳は日本で10番目の規模の前方後円墳である。このあと4番目の前方後円墳にも行くのだから、もし大仙古墳に行ったことのある人なら、あとは総社に来ただけで、前方後円墳のことはわかったと言えるのではないだろうか。まあ、前方後円墳をわかっていることにどんなメリットがあるか知らんけど……。
 
前座にして日本で10番目の古墳、作山古墳
作山古墳、日本有数の大規模古墳でありながら、観光客はいなかった。

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原型はとどめているものの、松が植えてあって、一見すると登ってはいけないように見えるけれども、道らしきものが用意されていた。ただし、どれが公式ルートなのかがわからなくてちょっと不安。
さすがに日本で10番目の古墳の後円部は傾斜がきつい。

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後円部の頂上からの見晴らし。いまでもすてきだけれども、作られた当時は杉もないので、いまの高層ビルからのような見晴らしだったに違いない。

 
後円部から前方部へと歩く。

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前方後円墳の石室は後円部にある。石室は後円部にあるので、前方部から徐々に気持ちを高めながら後円部へのアプローチなどもよいのだが、後円部から登るときのちょっとした登山のような気分も捨てがたい。
 
ここで枯葉を踏みしめる音がして、観光客かなと思ったら、ランナーだった。つまり豪族の墓も、いまや足腰を鍛えるためのトレーニング施設なのであり、栄枯盛衰を実感した。そのランナーが亡くなったときのお墓はこの古墳の1万分の1くらいだろう。
 
 
田畑の中に屹立する五重塔が当時のままのように見えて感動的
作山古墳を降りたら、つぎは備中国分寺。

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田畑の中を歩いていくと、五重塔が見えてくる。ちょうど六本木駅から南下したときに東京タワーが現れる、あの感じである。
国分寺というと、いまや廃寺になっていて礎石しかないところが多い。武蔵国国分寺に至っては、駅が残っていて周辺の開発は進んでいるのに、寺は礎石のみ。しかし当時、特に仏塔などは地域のランドマークも兼ねていたはずで、ここにはそのころの姿がおそらくそのままで残っており、タイムスリップしたような錯覚を受ける。
 
ただ、この国分寺も、重要文化財である五重塔以外はほとんど残っていない。

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塔の彫刻も彩色が残っていないのだが、動物のフォルムがゆるくて可愛らしい。

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とくに左の兔は、何か別の意図があって面白い顔にされているのかしらと思ってしまう。
 
こうもり塚古墳は石室が丸見え
備中国分寺から近いところに、こうもり塚古墳がある。さきほど見てきた作山古墳、このあと見る造山古墳は石室の収納具合が見えない。どちらも日本有数の古墳なのに残念だが、「石室を見たい&入りたい」という本日の渇望は、この古墳で満たされるので安心していただきたい。

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やはりここも貸し切りのような状態で見学することができる。古墳の脇では夫婦でない高齢の男女が身の上話をしており、このあとどうなるんやろというのが気になったが石室に集中しなくてはならない。
 

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石棺は、部分的に欠けたせいか、いやらしい裂け目が形成されている。
わたしが古代人なら、これを女陰だと思って崇めたりしていたと思う。 

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せっかくの古墳密集ゾーンなのだから、クライマックスの造山古墳の前にもうひとつ古墳をキメたいという気持ちになって、千足古墳に寄ってみた。
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……が、工事中で入れなかった。むしろラッキーなことに、修理中の古墳の姿を拝むことができてラッキーだった。
 
円墳のようなのだが、途中までトラックで乗りつける……想像していたよりもずっとワイルドである。
 
草木のない、より当時の雰囲気に近くなるよう修復するようなので、完成したら見に行こうと思う。
 
造山古墳は規模が大きすぎてもはや展望台だった
造山古墳の入り口は後円部にあるが、古墳の説明はもはや防犯の看板を支える役割しか担っていない。

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古墳と犯罪が結びつかないが、ここまでの規模になってくるともはや山で、山奥で恐喝されたり変質者が登場することは田舎では時々発生すると考えると、たしかに注意が必要なのかもしれない。どんな古墳やねん。

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変質者に気をつけながら、あるいは自分が変質者であることが露呈しないように気をつけながら後円部を登っていくと、頂上には荒神社があった。

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古墳が神社になっているのが大好物なので最高の気分である。
石棺も無造作に置いてある。

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実はこの古墳のものなのか、別の古墳から持ってきたものなのかは不明である。被葬者が見たらめちゃくちゃ怒りそうだけれども、触り放題なのは現代人にとっては大変ありがたい。大きな岩を削って作っているが、当然ながら手作業だし、設計ミスなども許されなかっただろうと思うと、被葬者よりも工人の苦労を偲んでしまう。この岩は阿蘇から運んできたらしいので、どの古墳のものであれ、被葬者はかなり豊かだったと思われる。
 

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枕状になっているが、そのまま横になると痛そうである。
 
 
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立派な鐘もあり、神仏習合やねーと思ったのだけれど、廃仏毀釈も古墳の頂までには及ばなかったということなのかもしれない。
 

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また、神社の脇には石棺の蓋があるのだが、よく見ると彩色が残っていて、こんなすばらしい遺物が触り放題なんてサービスにもほどがあると思う。観光地としての知名度が低い地域の醍醐味である。
 
ハイキングコースにしか見えないが、前方部に進んでいこう。

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最前部からの見晴らしは、先ほどの作山古墳とは別次元のスケール感。

 

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先ほど見た千足古墳の全貌も上から見るとよくわかる。千足古墳は造山古墳の陪塚にあたる。

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振りかえって前方部を望む。

古墳の周囲に堀はないため、古墳を支えるかのように民家が隣接している。

 
被葬者には申し訳ないが、小さなテーマパークのようで、最高の古墳だった。
この古墳の全長は350メートルで、大山古墳の486メートルには及ばないが、ピラミッドの一辺の大きさをはるかに凌いでおり、古墳のスケール感を体感するには、世界随一といってもいいのではないかと思う。
 
帰りは田園地帯を歩いて備中高松駅まで歩くのだが、用水路が太くて興奮した。

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古墳を振り返ると、ここで死にたいと思える感じになっていた。

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古墳は観光地として面白みがないと思う人も多いかもしれないけれど、風景とも合わせて、総社~岡山には、ぜひ訪れてみてほしいと思う。