ココロ社

主著は『モテる小説』『忍耐力養成ドリル』『マイナス思考法講座』です。連絡先はkokoroshaアットマークkitty.jp

「3食ちゃんと食べないとかえって太る」ってウソだろう?


趣味や嗜好が特に合わない人と話すとき、話すに事欠いて、食事の話になることが多いと思います。というか、趣味や嗜好の合わない人と話さなくてもいい世の中にならんものかねぇ……
でも、それを考え始めると気が狂ってしまうので、明日も健やかに生きるために話をすすめますが、「朝食は取らない」的な話をすると「え?3食とらないと太るよ!」と返事する人の多いことと言ったらありませんよね。キミたちはいったいどこから来てどこへ行くのか……。(ちなみにぼくは大阪・北河内から来ました。河内地方を「ガラが悪い」と思っている方もいらっしゃるとは思いますが、ぼく以外の人はガラよしです。)


「朝食は取らない」→「3食とらないと太るよ」というやりとりの異常さについてピンと来ていない方のために解説をさせていただきますと、こちらは単に「朝食はとっていない」という習慣を述べているにすぎず、その背景には、朝食をとるのは面倒である、とか、起きたら家を出なければいけない時間だった、とか、朝食を用意したその瞬間にイノシシが部屋に入ってきてパンを皿ごと食べちゃった(実際、食べ物と皿の分別くらいはつくだろうけれど、イノシシにはそういうガサツなイメージがあります)、などの理由によるものであり、朝食をとらない人のすべてがダイエット目的であるわけではない、ということは言うまでもありません。


といっても、ここで「3食食べるようになったのは江戸時代になってからの話。食べなくてはならないというのは生物学的に決まっているわけではない」などという話をドヤ顔でしてもしょうがないので、「3食食べないと太る」説をバックアップしていると思われる三つの団体についてわたしの知る限りここに書き、注意喚起の意味も込めて警告させていただきます。


念のため、本部のビルのイラストも載せておきますので、近くを通りかかったときは「これがあのビルかぁ〜!ブログで見たよ〜」って思ってほしいです。

全日本肥満協会


この団体は高度経済成長のなか、1970年に結成された、伝統があるというほど古くはないが、かといって、根なし草であるとも言えない程度の歴史を誇る団体であります。
当時は、高度経済成長の陰に隠れて陰湿ないじめが横行しておりました。「メガネが分厚いわりに成績がよくない」「三つ編みが下手すぎて、八つ編みくらいに見える」など、いわれなき理由でいじめを受けていましたが、肥満児も、格好のいじめの対象とされていて、肥満児たちに石が投げつけられる事件が多発。内出血のため、アントシアンをまったく含んでいないのに紅芋みたいに紫色になってしまうのでした……。
「このままではうちの子が危ない」と、すでに十分危なかろうというタイミングで肥満児の父兄が立ち上がって結成されたのがこの協会です。肥満児の地位向上のためにデモ行進をしたりしていたのですが、どうにも偏見はやまないので、「じゃあみんな肥満になれば仲よくできるよ。ただし肥満も度を越すと太ももと太ももの仲が悪くなって小競り合いを起こすかもしれないけどね!」ということで、「3食の方がむしろ太る」という情報を流し、「痩せたいと思っている人を太らせる」ビジネスを編み出したのです。なお、ビジネスといっても儲かるわけではないのが難点。

全日本穀物協議会


GHQがアメリカ国内で余っていた小麦の消費を増やすため、戦後、日本の学校給食でちびっこたちにパン食を普及させた話はあまりにも有名な話。しかし、コンビニのパンコーナーで「この小麦粉の塊はこう見えても陰謀によるetc.」みたいなのをドヤ顔でする大学生があまりにも増えてしまい、穀物のイメージダウンを恐れた農家が、もっと穀物について楽しい話をして穀物の消費量を増やしたい、という思いから設立したのがこの団体なのです。
ここでテコ入れの対象になったのはやはり、抜きがちな朝食。「チョーショくん」というキャラクターを発案し、イラストを発注したのはいいが、アヒル口が憎たらしくて食欲が減退するということでキャラクターの存在が疑問視されています。
この協議会のメンバーの見分け方は簡単。3食をすすめてきたときに「わかった!でも炭水化物とかを摂るとデブになるから、豆腐とかを食べるね」と返事をしたら、みるみる表情が曇るのです。

グリム童話研究会


むかし、「本当は怖ろしいグリム童話」という本が売れに売れました。「かわいらしくて夢いっぱい」というイメージの童話が、実は恐ろしい話だったという話は日本中に衝撃を与えました。当時はまだ大地震や原発事故もなかったので、その程度で日本は震撼していたのでございます……。なんて平和な時代だったんでしょう。
そんなリアルな感傷はさておき、二匹目のどじょうをねらって、「生活にひそむ意外なもの」全般をつかさどる団体として、元ヤンキーの高校教師を呼びかけ人として発足した団体です。この中では歴史が浅い団体ですが、「塩キャラメル」などを開発したり、「外はサクサク、中はトローリ」したたこ焼きなどを発明しています。
しかし、「塩なんとか」の普及に伴って、むしろ塩を入れないことの方が意外で、「塩なしキャラメル」などがバカ売れするようになってからは、活動は沈滞ムード。そこで起死回生を図って、食べ物というよりも食事全般の話ができるとスケールが大きくていいよね、という話になり、食事の回数と肥満の関係について調べたわけでもないのに、「食事の回数を増やした方がむしろ痩せるなんて!」と驚く顔が見たくて、つい「3食ちゃんと食べた方が痩せる」という説を唱えるに至ったのです。



以上、「3食食べないと太る」に潜む陰謀について告発させていただきましたが、本当に問題なのは、食べ物を残したら怒る人です。なぜなら、そこで残さず食べても単に新たなるデブが誕生するだけであり、そこで無理に食べたからといって飢え死にした子がビクンビクン…と蘇ったりすることはないからです。問題にしたいのであれば、食べきれないほどの食べ物を用意した時点で糾弾しなくては意味がありません。つまり、怒るタイミングを間違っていて、まるで虫歯が痛みはじめてから歯磨きを始める小学生のごとくなのであります。