ココロ社

主著は『モテる小説』『忍耐力養成ドリル』『マイナス思考法講座』です。連絡先はkokoroshaアットマークkitty.jp

シャブをキメてないのにシャブをキメてるように見える症候群

のりPのTAIHO関連の報道を見て、心底驚いたというか絶望した瞬間がありました。のりPがハイテンションで話しているシーンが流れていたのですが、それを見たコメンター?コメンテイター?が、「これはシャブですねー(This is a shabu.)」的な意味の解説をしていたのです。それを見て他の人も、また、テレを見ている人も「Oh, this is really a shabu.」と思っている風でした。肝心の世界の中心であるわたし(あなたにとってはあなたが世界の中心なのかもしれませんが、それと同様、わたしにとってわたしは世界の中心なのです)は…「これ普通じゃん(This is a normal NORI-P.)」と思っていたのです。


というのも、少なくともわたしの場合、普通に道を歩いていても、少々愉快な音楽でも流れていれば、あの程度ハイテンションになることはよくあることで、あれがシャブだとしたらこれもシャブ…あれもシャブ…きっとシャブ…ということで、わたしは歩くシャブということになってしまいます。


たしかに、思い返してみれば、この件に類似した例は何度も体験しています。基本的にわたしはお酒を飲むことはないのですが、いつの間にか、いっしょにいた人たちの記憶の中では、わたしが一番飲んでいたことになっていたりするのです。毎回飲むたびに「あれ?今日は飲まないの?」「いや、前回も飲んでないですよ…」という会話の繰り返し…あまりにも同じ繰り返しなものだから、よく使うセリフをカセットテープに吹き込んでおこうかしら…と思ったりもしますが、カセットって今となっては頭出しとかが面倒で、間違えて別のセリフを再生してしまいそう…しかも「飲み会で口にしてはいけないNGワード集」のカセットを間違って入れてたら大変なことになると思います。
「あれ?今日は飲まないの?」「せめて知識の量では優位に立って女性経験の少なさを補おうと思ってるのかもしれないけど、人の話をさえぎってウンチクを開陳したりしたら、ますます女性は遠ざかるばかりなのに!」…などのNG発言を返してしまったら火の海になるか、あるいは「よく言ってくれた」と賞賛されるかのどちらかでしょう。


―自説を理路整然と語りたかったのに横道に逸れてしまって申し訳ありません…読者のみなさまと神にお詫びしたいですが、お詫びの言葉を吐き始めると、あんまり反省していないこともあって、また横道に逸れてしまいそうなので普通に話を戻します。


この前の日曜、なんか秋風が吹いた気がしました。季節の変わり目は本当に気分のアップダウンが激しくて、自分でも手を焼くのですが、まだ夏だという油断があったのでしょうか、たちまち制御不能なほど気分が沈んでしまい、電車の中でもあふれてくる涙をおさえるのに一苦労だったのですが、電車を降りて新宿の街を歩いているうちに、たちまち気分がよくなって、ウォークマンXから流れるゴキゲンな音楽に合わせて鼻歌を歌いながら、軽く行進していました。30分ほど前は、涙をこらえるのが必死だったというのに…なお、鼻歌っていっても、もともと歌が入っている音楽はあまり聞かないので、鼻歌というか、鼻音楽というのに近くて、「ミミミミミミミミョミョミョミョミョミョベベベベベボボボボボボボ…」などとシンセの音を口で巧妙に再現しようと試みているだけなのですが、歩いている間にどうやら小銭がダダ漏れだったらしく、ピュアな中学生が落とした小銭を照れながらぼくに渡してくれました。中学生よありがとう!
たしかに、鞄はいつも全部開いていることが多くて、お金がすごく減っている感じのときもあります。たぶんスリとかにやられてるときもあるのかもしれないけど、細かいことを気にすると女にモテないと聞いたので、あえて鞄は開けたままでいようと思います。


ということで、冒頭の話に戻るのですが、あの、シャブをキメキメ疑惑ののりPに向けられた視線というものは、わたしに向けられた視線に等しく、しかも、のりPはキメキメなのに、わたしはシャブどころかお酒も飲んでないのに不審者と見なされるなんて不公平にもほどがあります。しかも、より悪いことに、シャブやら何やらをキメてTAIHOされた人は、最初は笑い者にされるのですが、だいたい笑い飽きたころには、家庭環境がらみの悲しい話が今見つかったかのように語られ、「シャブをキメるのも無理はない」的な気持ちにさせられてしまうところがズルいです。


その一方で、わたしのように、シャブをキメていないのにシャブをキメている感じの人は、「泣ける話を明かして情状酌量してもらう」という救済措置が用意されていないのです!そもそも泣ける話なんてないし…生い立ちは普通だし、親にも愛されてたと思うし、悲しいのって飼ってた金魚が死んだことくらいです。とんでもなく安いテレビドラマを見て号泣したりはするけれど、それもまたシャブをキメている精神状態と大差ない気がします。
わたしにとって唯一の頼みの綱はわたしが東大卒ということで、東大を出ていれば少々おかしくても「天才とナントカは紙一重」的な言い方で許容されることもあって胸をなでおろしたりすることもなくはないのですが、別に天才でも何でもなくて、単にズレているだけなので、本当に毎日がスリリングです。
たまに会社の人に「会社ではブログよりまともですよね!サラリーマンに見えます!」と褒められるのですが、それもいつまで続くのやら…狂気を隠し通したまま、定年まで過ごせるのか、不安でたまりません!