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ココロ社

主著は『モテる小説』『忍耐力養成ドリル』『マイナス思考法講座』です。連絡先はkokoroshaアットマークkitty.jp

キーボード掃除に使う、キーを引き抜く器具の中毒性について

キーボード掃除の研究家のココロ社です。

いま家で使っているキーボードはダイヤテック社のFILCOというブランドのもので、エンジニアの人がよく使っていて、さすがエンジニアの人が使っているキーボードは、見た目はかっこよさ控えめでも打ちやすさと頑丈さは格別だなぁと自分に言い聞かせながら使っている。もう5年以上は使っていると思うが、おかしな動作をしたことが一度もなく、デザインに飽きても買い替える言い訳ができなくて残念なほどである。

最近の電子機器は、中途半端に洗練されていて魅力が感じられない。キーボードなどは、あれだけキーが並んでいてスタイリッシュになれるはずもなく、その道を選んでもあまりいいところに行けるはずがなくて、昔そうだったように、無骨さで突き抜ける方向しかないと思う。
デザインという概念に乏しかったころのデザインの方が美しく感じられるというのは皮肉なもので、PC9801のキーボードなどは最高にすてきだし、Dos/V機用なら、いまもオークションで高値で取引されているIBMのものは、買うのを我慢するのが大変である。現役のキーボードなら、東プレが作っているもののいくつかのデザインは魅力的だけれど、2万円くらいする。これはデザイン料ではなく、その機能に見合った金額なのだが、わたしはFILCOのキーボードの打ちやすさには満足しているし、もっと言うと、東プレのお世話になるほどにはキーボードを使っていないのだった。
そうなってくると、ますます、キーボードが壊れてもいないのに、2万円のものを買うことに、超人的なこじつけ力を要するようになる。

このように買い替える理由を奪われ、わたしの命令どおりに時折珍妙な文字列を入力しつづけるキーボードだが、5年も使っていると、底にゴミが溜まってくる。気のせいかもしれないが、ホコリがクッション状になってふんわりした感触が指を伝ってくることもあり、そんなときは背中がゾクゾクして不快なので、掃除をしてみたいという気がしてきたのだった。汚れたキーボードの中は便座より菌が多いという話もある。「便座より汚い」という比較は、これに限らずあらゆるところでされていて、むしろ便座のイメージアップになっているように思うが、それはともかく、実際、掃除にチャレンジしてみるとわかるのだが、キーをうまく抜くことができない。台形のものを上からつまんでも指が虚しく滑るだけである。文章だけではわからないかもしれないと不安になり、図解してみたので、適宜ご参照いただきたい。

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しかたないので、キーの隙間に紙を挟んでホコリを取り除いたりしていたのだが、より徹底して掃除したいと思い、調べていたら、キーボードのキーを抜くための器具が、ほかでもないFILCOブランドから出ていて、さっそく取り寄せた。(なお、メカニカルキーボード用のようなので、ノートパソコンなどによく使われているパンタグラフ型には向かないようなのでご注意くださいませ)

わたしはインターネットをよく見ていて、さまざまなビフォーアフターの記事と、その反応を見てきたが、ほとんどの場合、アフターの美しさよりも、ビフォーの汚らしさに人は注目してしまうという法則を発見した。例外なのが洋服で、ビフォーとアフターの差がほとんどなかったり、アフターの方がビフォーよりも醜くなっていたりするのだが、この事象はおそらく、ビフォーでもあまりけなされると心が折れてしまうと思って、ついついそれなりによい身なりにしてしまうからこのようなことになるのだと推察するが、それはともかく、汚いキーボードの写真を載せても何もいいことはないので、どのようにキーを引き抜くかについて示すにとどめたい。

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この器具、何もしていないときは嫌がるハムスターなどに強制的に薬を飲ませるための器具のように見える。実際そういう目的で使えるかもしれないが、ハムスターに薬を飲ませるために口をこじ開けるというシチュエーションが実際に発生するかどうかは知らない。
キーを、この輪で挟んで、軽く捻って引き上げれば、簡単にキーが抜けるのである。

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スペースキーなど、面積の広いキーについては、別に針金を仕込んであるものもある。軽く引っ張ってから、長辺にあたる部分をずらすことで外すので注意が必要になる。抜いたキーは石鹸でもみ洗いをして、タオルの上に置いて乾し、その間に、丸裸になったキーボードを綿棒や掃除機で丹念に掃除すればよい。

問題なのは、抜くときに絶妙な清涼感が発生することである。歯磨きをしているときに、「おお神よ……歯の仕様はおかしくないと思われませんか。まったく痛みがなくて抜き差しできる仕様だったら一気に抜いてジャブジャブ洗えてよかったのに……」と祈ったことがある人にはたまらない作業なのだ。歯磨きではできないことが、キーボード掃除ではできる。わたしも、100個以上のキーを抜いた感触が手に残り、いまやキーボードが汚れていないか粗探してしまう有様なので、キーボードの掃除をしたいと思っている方は、それなりの覚悟をもって取り掛かるべきだと思う。特に安いキーボードを使っている方は、掃除する時間をコストに直すと、新品を買い直した方がよいこともあるだろうし、なるべくならこの気持ちよい器具からは遠ざかった方が身のためである。