ココロ社

主著は『モテる小説』『忍耐力養成ドリル』『マイナス思考法講座』です。連絡先はkokoroshaアットマークkitty.jp

5000曲以上から選んだ、2015年に最高だと思った曲10選

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ココロ社です。2016年になったので、2015年によく聴いた曲10選について書こうと思います。

2015年は2016年になってから振り返りたい

こういうのはなぜか2015年中に載せるならわしになっているけれど、読むたび、12月はどうしたの?という気持ちになる。1ヶ月分飛ばしたら記事の価値が8.45%くらい損なわれると思うのだけれど……。12月をないがしろにしてまで2015年中に伝えようとしなくてもいいのかなと思って、年が明けてから書き始めた。

2015年のリリースに限定しても、「2015年的である」とはいえない

また、2015年以前にリリースされた音楽が、2015年にリリースされた音楽より2015年的なこともあるので、「2015年にリリースされた」という縛りは、2015年を振り返るにあたっても意味がなくなってきている―たとえば79年リリースの、Harry Thumann"UnderWater"
を聴いても、再発見されて一部のクラブでかかりまくっていた2005年あたりを想起する人の方が多いだろう―こともあり、「2015年によく聴いた曲」を選ぼうと思う。

Underwater Original Version 1979

Underwater Original Version 1979

  • Harry Thumann
  • ダンス
  • ¥150
  • provided courtesy of iTunes

アルバム単位で選ぶこと自体が反2015年なのかもしれない

言うまでもないが、アルバム単位で振り返るのも無意味―ダンスミュージックでは30年以上はそうだけれど―なので、「曲」で語ることにした。アルバム単位で2015年を語ることもまた、2015年から遠ざかることになるだろう。もしかすると、音楽が音楽でなくなり、ライブやDJミックスの付属物となってしまうなら、アルバム単位か、ライブ単位で語る日もくるのかもしれない。


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前置きが長くなってしまった。
今年も試聴したのも含めて5000曲以上は耳にしていると思うけれど、本当にこの10曲は大好きなので最高しか言わないと思う。
いちおう試聴できるようにしておいたけど、30秒だとどうもわからんね……。


Fox"The Juggler"(GTO)
2013年から、 PsychemagikのMagikなんとかシリーズがリリースされはじめ、いわゆる普通のダンス・クラシックスなどはまったく含まれておらず戸惑いつつも新しい扉が開かれることがうれしくもある。まだまだ聴きすすめてはいないのだけれど、いつのまにか、この曲ばかり聞いていた。しゃれたアシッド・フォークで、ボーカルを聴いて、てっきりピッチをあげてかけているのかと思ったら、Foxはいつもこの歌い方。ひととおりアルバムを買い揃えてみて、ふつうのポップスで、たまたまこの曲だけがdopeだったものの、どのアルバムもポップスとして大変重宝している。
しかし、DJのセットリストで気に入った曲があるからといっていちいち掘り下げていては身がもたないので、必要最小限にとどめておこうとも誓ったのだった。

The Juggler

The Juggler

  • Fox & Fox
  • ポップ
  • ¥150
  • provided courtesy of iTunes


Tzusing"4 Floors of Whores"(Long Island Electrical Systems)
創立5年、昨年も順調にリリースを重ねた長島電気設備。シカゴの初期アンダーグラウンドハウスを再現したり拡大解釈したり、あるいは考えすぎてインダストリアル状になってしまったりなど、どれを聞いても面白い。他にも好きなものはあるのだけど、特筆すべきだったのはこれ。
Liaisons Dangereusesを思わせるファシズム臭いシンセに、ボディ・ミュージック崩れのようなモッサリしたドラムだけでも十分満足なのだが、その上にパワーエレクトロニクスのような、ペシャンコにされて何を言ってるんだかさっぱりわからないボイスサンプルが乗っかっていて稀有な一曲だと思う。パワーエレクトロニクス的なものをダンスミュージックに乗せるのは意外に難しく、数少ない成功事例として大変貴重なので、聴き飽きないようちびちび聴きたい。

4 Floors of Whores

4 Floors of Whores

  • Tzusing
  • テクノ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes


George Theodorakis"The Rules Of The Game"(Into The Light Records)
前衛コーナーに置いてあり、わりと前衛は間に合ってるんだけどまあ買っておくか、と思って聞いたら大変ユニークなコズミック・ポップで慌てて襟を正して聴きいった。冒頭のシンセのフレーズが否応なくギリシャを想起させてオリエンタリズムが大爆発、頼りない歌が始まるころには完全に出来上がっているという寸法。
これが収録されているアルバム"The Rules Of The Game: Original Studio Recordings (1978-1996)"はベスト盤で、Vangelisなどと比べてもダンスフロアを意識していて、前衛コーナーに隠れていないで、もっと知られていいように思う。

The Rules of the Game

The Rules of the Game

  • George Theodorakis
  • アンビエント
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes


Steve Winwood "Higher Love"(Island Records)
86年の都会派ソウル傑作。全米チャートでもトップになったので、聞いたことのある人も多いと思う。
スターバックスかどこか、アメリカ感のするコーヒーチェーン店で、そろそろ席を立とうと思ったときにこの曲が流れて、久しぶりに聞いたけどこれは聞きたいときに聞ける状態にしておくべきでは、という気持ちになり、家に帰って大昔に買ったレコードを引っ張り出して録音してウォークマンにおさめ、それ以来、狂ったように聞いている。マジョリティーの人って喫茶店などで自分の好きな曲がこんな風に毎日毎日かかってるんだなと思うと羨ましい。

Higher Love

Higher Love

  • スティーブ・ウィンウッド
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes


Kathy McCord "Rainbow Ride"(CTI)
アシッド・フォークを聞こうと思ったのだけれど、 吐痙唾舐汰伽藍沙箱の『あんまり深すぎて』しか知らず、勝手もわからないので、「アシッドフォーク 女性」という非常にザックリした検索をしたらすばらしい音楽を見つけた。
フォーク好きにとっては言わずとしれたマスタピースらしく、まったくフォークに詳しくない自分でも、始まって5秒もしないうちに大作だとわかるほどの大作感がある。70年リリースで、邦題は『虹の架け橋』。後半が全然関係ない感じで演奏が持て余して思わず四次元に旅立って突然正気に戻るところも含めて傑作だと思う。もしご存じない方がいらしたら必聴。

Rainbow Ride

Rainbow Ride

  • Kathy McCord
  • ポップ
  • ¥200
  • provided courtesy of iTunes


Jose Padilla "Day One"(International Feel)
イビサの重鎮が、バレアリックが再興してからは無言だったのに、突然アルバム"So Many Colors"をリリース。これは先行シングル。個人的には90年代はイビサのことなんてどうでもよかたんだけどね……。
冒頭からつっこんでくるFM音源臭いファットなベースが古のNu Grooveを想起させる。バレアリックのプロトタイプだったLB Badの"New Age Of Faith"がNu Grooveから出ていたことを思い出して納得してしまった。生まれたてのバレアリックを堪能した。なお、アルバムも、コンセプトアルバムというより、一曲一曲ダンスミュージックとしての機能性を重視しているので、買ってもいいかもしれない。

Day One

Day One

  • ホセ・パディーヤ
  • ダンス
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes


Ge-Ology Featuring Mark De Clive-Lowe "Moon Circuitry"(Sound Siganeture Sounds)
00年代は、Sound Siganeture Soundsの新譜が出て、ピンと来なかった場合、「ぼくのセンスに問題があったのではないか」と自問させてしまうほどの勢いがあったのだけれど、今は気づくこともなくなってしまった。しかしたまたまBeatPortで見つけたこれは、久しぶりに耳にするデトロイト・テクノ保守本流系で、見つけてよかったと思った。いかにもデトロイト的な金属的なトラックの上にフリーなシンセリードが乗っかっていて大好物だった。
わりかし寡作な人で、クリエイター生命を縮めてしまいそうな完成度だけれど、次も早く聴きたい。

Moon Circuitry

Moon Circuitry

  • Ge-Ology
  • エレクトロニック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes



The Orb "God's Mirrorball"(Kompakt)
近年、90年代から活動しているビッグネームのアルバムもちょこちょこ出ているものの、また聴きたいと思えるのが少なくて大変残念だった。そのなかで、念のために買ったThe Orbの6年ぶりの新譜は最も輝いていた時期よりも輝きを増していて驚いた。
高音質のSEやパーカッションが飛び交ってさんざん焦らされ、満を持して太いベースとゆったりした重いドラムが始まる。昔のThe Orbは焦らされているうちに聴く気が失せてしまうこともあったが、今回はすべての瞬間が傾聴に値する。メカニックという感じでもなく、宇宙人にとっての民族音楽はこんなのだろうなと思わせる。聞き終えるたびに「もう終わりなん……」と思って連続再生してしまう。
iTunesの試聴の30秒を聞いた限りではまったく聞きたくならないかもしれないけれど、この後の14分間は最高。

かつて40分に及ぼうかというシングル"Blue Room"を全英ヒットチャートに叩きこんだ(買い支えた90年代のイギリス人、先進的でやばすぎる……)ときの輝きを今なお持っていると思うのだけれど、全英が正気にかえってしまったらしく、そこまで売れていないようでとても残念。

God's Mirrorball

God's Mirrorball

  • The Orb
  • エレクトロニック
  • provided courtesy of iTunes


Insanlar "Kime Ne" (Ricardo Villalobos Mix 1)( Honest Jon's Records )
Ricardo Villalobosは昨年、ハードハウス初期の傑作"What is house Muzik"をリミックスするなどの活躍もしていて、それも好きなのだけど、こちらは露骨な呪術感がたまらない。抽象的な音楽だからお咎めなしだが、ポリティカル的にコレクトなのかどうなのかとさえ思ってしまう。
この催眠効果は80年代末に、Psychick Warriors ov Gaiaという、サイキックユース寺院の下部組織的なユニットが先駆けている。その後、PWOGという略称でやばい出自を抹消して渋めのNYハウスに転身していたが、彼らが同じ路線を続けていても果たしてここまで来られたか謎である……。
これはiTunesなし。Discogで2000円代で買える。


Private Agenda"Deja Vu"(International Feel)
International Feelは新譜を聴いてないと時代に乗り遅れてしまうような気がするのでまず聞くことにしているが、もう最先端が何だかわからなくなってしまう1曲だった。
ここまで律儀にイタロディスコを再現しているものも珍しい。誰かに脅迫でもされてるんかいな。イントロが噴いてしまうくらいダサくて、露悪的だとも思うが、あの時代特有のエモーションを表現していてはからずも夢中で聞き入ってしまう……。

Deja Vu

Deja Vu

  • Private Agenda
  • ダンス
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes


去年の後半あたりから新譜の多くをダウンロード購入に切り替えたのだけど、趣味が変わったりするのか自分の変化が楽しみである。


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