ココロ社

主著は『モテる小説』『忍耐力養成ドリル』『マイナス思考法講座』です。連絡先はkokoroshaアットマークkitty.jp

事実上のストロベリー・スイッチブレイドのセカンドアルバムが今になってリリースされておりました……の巻

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ストロベリー・スイッチブレイドの最初にして最後のアルバムが出たのは1985年のことで、あれから30年も経つ。
イギリスや日本のヒット・チャートを席巻した"Since Yesterday"(邦題は『ふたりのイエスタディ』)に代表されるように、ネオ・アコースティックのメロディに、まったく不似合いなノイジーな電子ドラムの音が混ざっているところが画期的だった。これはプロデューサーのDavid Motionのオーバープロデュースによるもの。本人たちにとってはこのアレンジは本意ではなかったようで、そのことは、最初にストロベリー・スイッチブレイド としてリリースした"Since Yesterday" と、Current 93のライブで演奏していた"Since Yesterday"を聴き比べてみたらすぐわかる。

Since Yesterday

Since Yesterday

  • ストロベリー・スウィッチブレイド
  • ポップ
  • ¥200
  • provided courtesy of iTunes
Since Yesterday

Since Yesterday

  • Current 93
  • オルタナティブ
  • ¥150
  • provided courtesy of iTunes

どんだけ我慢してたのかと。
王道のネオ・アコースティックがやりたかったのかと思うけれども、このままリリースしていたら、ストロベリー・スイッチブレイド の名前をいま知っている人はほとんどいなかったかもしれない。(そう言いつつも、何回も聴いていて、これはこれで好きだけれども……)

恥ずかしながら、ぼくはこのアルバムを30年間にわたって、少なくとも週に1回は聴いている。
あまりにも後ろ向きなので、20年くらい前から聞くのをやめたいと思っているのだけれど、やめられなくて困っている。

ぼくにとってストリベリースイッチブレイドは悩ましい存在なのだが、去年、ふと検索してみて、片割れであるRose Mcdowallが、2004年にひっそりと" Cut With the Cake Knife”というアルバムを出していたことに気づいた。
録音は86年~88年。彼女がのちにSorrowやSpellといったユニットからリリースしていたものと違い、ストロベリー・スイッチブレイドの最初のアルバムが出た直後から録りためていたもののようだった。

しかし、サイン入りかつ500枚限定ということもあって、つい先日までは2万円という結構なお値段がついていたのだった。
いや待てよ、このアルバムを2000回聞くとしたら、1回あたりわずか10円であり、それを考えるとまったく高くないと言えるのではないだろうか、ただ、このあと、このアルバムを2000回聞くような人生を送りたいかというと何とも言えない……などと逡巡しながら、ときどきDiscogsのページを見ていたのだけれど、あるとき価格が値下がりしていたのである。
おかしいと思って念のためAmazonを検索してみると、なんと再発されていたのだった。ただちに購入し、Amazonの配送状況を何度も何度も見に行ってしまった。

実際に聞いてみると、あのころのストロベリー・スイッチブレイドの音が真空パックされていたようで、こんな素晴らしいものがお蔵入りになっていたのかと驚くばかりである。


Tibet

Tibet

  • Rose McDowall
  • ポップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes
Cut With the Cake Knife

Cut With the Cake Knife

  • Rose McDowall
  • ポップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes


産業的なアレンジに可愛らしい歌声。そして、ジャケットのデザインと音楽がますます乖離しており、持て余している感がすばらしい。目のところが黒くなっているけど何を考えているんだ……。
本人は、ライナーノーツのインタビューで、もっとギターを使って作りたかったという意味のことを述べていらしたのだけれども、むしろこれでいいのだと思う。録り貯めていた曲の一部は、ストロベリー・スイッチブレイドのセカンドアルバムに収録されるはずだったのだが、方向性プロブレムでユニットは解散してしまったし、そのあともリリースする気になれなかったとのこと。親友が電車に飛びこんで自殺etc.いろいろあったようなのだけれど、聴くことができてよかった。
長生きしてみるものだと思ったのだが、ただ、このアルバムを2000回聞くような生き方もそれはそれで問題だとも思っているし、ご本人も2000回聴いたファンがいると知ったら笑顔がひきつるだろう。

Cut With the Cake Knife

Cut With the Cake Knife



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