井の頭公園の井の頭池の水抜きをやっていると聞き、まあ今行っても遅いから次回行こうかと思ったのだけれど、「次回行ってみよう」は「今度飲みにいきましょう」と似ていてよろしくない、と思って行ってきた。
今回の水抜きは、水質の浄化と外来生物の駆逐が目的らしく、行ってみたらボランティアの方々が生き物の捕獲を粛々と執り行っておられた。
池のそばには入れないよう、オレンジ色のサムシングで厳重にガードされていて、よく見えないなぁ……と思っていたら、捕獲された生き物を紹介するコーナーがいくつか設けられていて助かった。
バケツや水槽に入れられている生き物たちは地味すぎるかグロテスクであるかのどちらかで、「気持ち悪い外来種やなぁ……」と思って札を見ると、意外に在来種が多かった。
たとえばこの邪悪な亀、図体が大きく、日本の粋なイメージの対極にある、いかにも外来種然とした亀……と思ったらニホンスッポン。
この、無駄に体が大きくて、なんでも食べそうな図々しいたたずまい、いかにも外来種……と思ったらヘラブナ。
つまり、「外来種=悪役=不細工」という三段論法は使えない。
「外来種=悪役」でもないし、「悪役=不細工」でもないのだから、「外来種=不細工」とはいえるはずもない。
もう一つのお目当ては池に廃棄されたゴミたち。
自転車たちは、昨日はもっと多く見つかって撤去されたらしいけれど、1000台も見つかったわけではない。
たとえば100台としても、今回は25年ぶりの水抜きなので、年間4台程度になる。
あれだけ周辺に自転車と酔っ払いがいるのに、3か月に1台で踏ん張っているとしたら結構なマナーのよさではないかと思う。
この井の頭池は、湧水が集まってできていた池で、かつては水も澄んでいたようだけれど、今はご存知の通り。
水質が悪くなった原因は、写真を見た印象だと、ゴミを捨てる不届き者たちのせいのように思えるが、実際、自転車やお面が大量の毒毒エキスを放出しているというわけではない。
原因の一つに餌やりがある。
池の生き物に餌を与えすぎたため、特定の外来生物が繁殖し、排泄物が水を汚したり、水生植物を食い荒らして自浄能力が低下したこと。
生き物に餌をやるのは楽しい、「わたしは世の中で必要とされていないのでは」という疑惑が頭をもたげたとき、生き物に餌をやることで、なんとなく心を落ち着けたいと思うのかもしれない。
生き物を可愛がりたいというのは嘘だとしても、悪意があってやっているわけではないだろう。
水質悪化の最大の原因と言われているのは、地下水の水位が下がってしまったこと。
台風のあと、地下水の水位が上がって、たちまち池の水が澄んだという事例もあるらしい。
これは地下水のくみ上げや、住宅地の拡大が原因で、これもまた、善意のしわざではないにせよ、悪意があってのことではない。
親子が、「こんなとこに自転車を捨てて……ひどいねぇ……」と言いながらケミカルな柔軟剤の匂いをまき散らしていたのだけれど、この親子も吐き気を催させてやると意気ごんで柔軟剤を何杯も洗濯槽に注いでいるわけではなく、本人たちは「いい匂いだよねー」と思っているのである。
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