ココロ社

主著は『モテる小説』『忍耐力養成ドリル』『マイナス思考法講座』です。連絡先はkokoroshaアットマークkitty.jp

東京都内。「名水百選」に選ばれた湧水を体感&民家で「足打ち」うどんを食べる


「名水」というと、ハンバーグが好きそうなタレントが「この水、甘いですね!」と、わかったようなコメントをすることを強いてくる不思議な液体として知られていますが、その澄んだ液体の所在地として想起するのは四万十川なのかもしれません。しかし、東京にも「名水百選」に選定された地域があるのをご存知でしょうか。それが国分寺なのです。
まあ、水だけだったら富士山のおいしい水をマルエツで買ってくればええやん(関西在住の方は「六甲のおいしい水をサカエで買うてきたらええやん」と読み替えてください)という話になりかねませんが、水以外にも見る場所がいろいろあるので、近くに立ち寄った際はご検討くださいませ。

まず、強烈なコシの「武蔵野うどん」を民家で食べます

今回はおもに駅の南をめぐりますが、その前に北口から出て、せっかくの武蔵野ですから武蔵野うどんを食べます。
讃岐に行って讃岐うどんを食べずにおれますかという話です。お店の名は「足打ちうどん処 七」。人気店なので、開店時間の11時(平日は11時半)に行くことを強くおすすめします。駅から北に15分ほど歩きます。
国分寺駅は、丸井と合体していて、最寄り駅が何とも合体していない人にとっては大都会に思えますが、5分も歩くと、ゴーストタウンのような空間が出現。

▲この店、気になりますね……最近のラーメン屋は武士を思わせる店名が多くてどうにも気持ち悪い……と思っている方にはうれしい店です。



▲10分程度歩いて地図に示されているのはごく普通の民家。ここが「七」なの?あんたもナナって言うんだ……NANAを読んだことがなく、最近の若者の気持ちを知るために読まなアカンなどと思っているうちに時は流れ、当時の「最近の若者」たちはすでに若くなくなってしまい、読む必然性がなくなってホッとしている……などと思っている間にもどんどん近所から人がやってくるので、ここを七と定めて急いで入ります。
幸か不幸か足でうどんを打っているところは見られませんでしたが、「手打ちうどん」があるのに「足打ちうどん」がこの店の他にないのは、やはり「足打ち」に不潔なイメージがあるからでしょうか。手には雑菌がつきやすく、場合によっては性器よりも不潔であるという説もあるので、足打ちうどんが手打ちうどんと比較して特別に不潔ということはないはずですし、体のどの部位でうどんを打とうとも、衛生管理は徹底されているはずなので、職人さんが打ちやすいと思った部位で存分に打てばよいのであって、食べるわれわれもつまらないイメージに囚われてはいけないのです。
店に入ると、靴を脱ぐべきかどうか悩みますが、そのまま土足であがりこんで大丈夫です。なぜなら、店内ではEXILEや西野カナのプロモーションビデオがけっこうなボリュームで流しており、店がわれわれの心の中に土足であがりこんでくるからです。成形肉のステーキを想起させるこれらの音楽をお好みでない方にとっては、こんな音楽を聴きながら食事をするなんて論外、という気持ちになるかもしれませんが、これはよかれと思ってしてくださっているのですから、軽く体を揺すりながら待つのがマナーと言えるでしょう。

なお、この店、ラーメン二郎程度の知識は要求されます(注:ラーメン二郎は、マニアが言うほどには知識が必要とされないという認識です)。食券を買うシステムなのですが、「小」と書いてあるものが通常の並の量なので、太りたいと思っている人以外は「小」を選び、買ったら、店内の座席図の自分が座る予定の位地に券を置きます。
西野カナさんの、要約すると「きっと幸せになれる」的な歌を聴きながら待っていると、幸せの具現化であるところの武蔵野うどんが、かき揚げと肉汁を伴って颯爽と登場。


▲武蔵野うどんらしい、カミカミしがいのある強いコシです。かき揚げはボリューム大。出口付近にビニール袋があり、持ち帰ることも可能です。名水を見ながらかき揚げを頬張るのが好きという特殊な性癖をお持ちの方は利用してみてはいかがでしょうか。

足打ちうどん処 七

食べログ足打ちうどん処 七


お鷹の道沿いに名水をさかのぼります

満腹中枢が十分に刺激されたら、南進して駅の反対側に向かいます。
ここから名水を求める旅のスタートやで〜!。


▲駅の南、マルエツファミリーマートの間の道を下っていくと、ほどなくして川が交差する不動橋にあたります。
太いほうの川は野川。かつてわたしがプラナリア捕獲用の罠を作って置いたものの、何もかからなかったという因縁ありの川です。
細い方の川というか用水路をさかのぼる道が、江戸時代の鷹場への道で、「お鷹の道」と名付けられています。
「おたか」というと土井たか子を想起し、「行くっきゃない!」と言いながら歩いてしまいますね。



▲この用水路、ホタルが住んでいて、随所に「カワニナ採集禁止」の看板があります。
あんなタニシみたいな地味な貝、誰も取らへんよ、と思うのですが……



▲清流の中でうごめくカワニナの姿を見ると触角が出てちょっとカワイイかも、と思い、出来心が芽生えてしまうので、やはり採集禁止の看板は必要なようです。


▲用水路をゆったりと10分ほどさかのぼると、湧水源に辿りつきます。






▲ここが湧水ポイントです。名水に選定されるだけあって透明度が高い。
モニタリング的なことをしているらしいので、水を採集するときは川を汚さないよう注意が必要です。



▲すぐ近くには「真姿の池」があります。要約すると、「美女→病気で顔が不細工に→この池で洗う→美女に戻る」という伝説の池です。
おそらく食生活を改善したりしたので美女に戻ったのだとは思うのですが、どうせ伝説を作るのなら、元があんまりな感じの人が美女になる伝説の方が普通の人の食いつきがよいのでは、と思います。




▲透明度の高い池の中で、カメやコイが我が者顔で泳いでいます。
水がきれいなところにふさわしくないメンツであることは否めません。



湧水ゾーンの近くにAZUMA-YAがあります。そこで休んでもいいのですが、荷物をそこに置き、靴を脱いで川に入ると気持ちいいです。
湧水なので真夏でも冷たくて気持ちいいです。なお、多少の人通りがありますが、気にする必要はありません。人目を気にして川に入らない人生なんて!



▲なお、足が小さく見えるのは、アホみたいに裾の広いベルボトムを履いていたからです。
この川に入ると足が小さくなるわけではないのでご安心くださいませ。

かつて最大級の国分寺だった武蔵国国分寺の面影を感じとります

国分寺は国分寺というだけあって国分寺があるのですが、現存する国分寺は、後世に作られた薬師堂。
最初の創建は、8世紀にさかのぼります。そのあと、火事になったり戦乱に巻きこまれたり仏教がどうでもいいと思われたりして、本堂と薬師堂のみというミニマムな構成で生きながらえております。
金堂やらなんやらのあった場所は、公園、というか、野原になっていて、寂れた場所が好きな人にはたまらない絶景です。
関西出身で、平城宮が好きだった人は間違いなく気に入るはず。



▲本堂はもともとはなかった建物で、江戸時代に建てられました。写真に写っている爺の、後ろに布がついている帽子、ルソン島をイメージさせますが、どこに売ってるんやろ……。
売ってて買うかどうかはわからんけど。

本堂は外から見るだけなのですが、境内のジャングル状になった万葉植物コーナーがにぎやかで楽しいです。

▲もはやどの植物がどれを指すのかは不明ですが、説明しようというその心意気だけで飯三杯くらい食べられそうです。



▲本堂を出てすぐ右には仁王門があり、薬師堂に行くことができます。
こちらは14世紀に建てられたものなので、古ければ古いほどよいという価値観を仮に採用するのであれば、本堂よりよい建物ということになります。



▲門の中のa&unは、怒りのあまり眼球が濁っております。特にaの方は割れていてお尻を想起させます。
やっぱり怒りすぎるのってよくないですね。「正義感が強いがゆえに怒りっぽい人」と「悪事を見逃してしまうが物腰は穏やかな人」だったら圧倒的に後者の方がいいのですが、前者の人の多くはそれに気づくことなく、陰口を叩かれながら一生を終えるのです。



▲そしてこの門には、ミツバチの巣についてのうれしいお知らせがありました。
「蜜蜂注意!」を、「注意してミツバチを観察してみよう!」という意味ととらえました。
なぜなら、単純に「ハチの巣注意!」あるいは「猛虫注意!」と言えばいいものを、ハチの種類にまでわざわざ言及しているし、しかも親しみやすい丸ゴシック体です。
昆虫が好きという気持ちは隠そうと思っても隠しきれないようです。



▲どうやら、柱に空洞になっている場所があり、そこが巣になっている模様。
せっせと仕事をする働きバチの姿に、平日の自分の姿を重ね合わせてしまいますね。



▲よく見たらきのこ状のものがある。こういうところのって必要以上においしそうに見えて困ります。食べないなら分けてくれ!




▲門から階段を上がると薬師堂です。誰もいないのですが、毎年10月10日の御開帳の日以外は何もありません。
なお、10月10日に土日があたるのがいちばん早くて2015年なので、覚えていられるか自信が持てない。



▲この手のを見るたびに、「フランスやイギリスの人とここに来るときはこのマークの説明をしといた方がいいんやろうかどうやろか……」と迷ってしまいますが、わたしには外国人も含めて友だちはほとんどいないため、心配にはおよびません。



▲退屈した場合は、建物の後ろに回ってみてください。
お地蔵さんコーナーがあって、ワイルドな修復ぶりに微笑みが漏れることでしょう。
スペインで勝手に修復されたキリストの絵の立体版のような趣があります。



▲なお、本堂の前に楼門がありますが、これは東久留米市の米津寺にあったものを明治期に移築してきたもので、紛らわしいところが素晴らしいです。
フッ素とフッ酸くらい紛らわしい。

武蔵国分寺跡資料館でイマジネーションを培います

このあと広大な国分寺跡を歩きますが、その前に武蔵国分寺跡資料館の写真とジオラマで、どこに何があったのかを把握しておきます。



▲ここでの学習により、このあとの旅での感動の深さが変わってくるので、真摯に向き合いたいところです。



▲また、ここには七重の塔の模型が立っています。
これを脳裏に焼きつけるか、写真を撮るかすれば、七重の塔の跡に着いたあと、妄想を爆発させる準備は完了です。

礎石からニョキニョキ講堂や七重の塔が生えているところを想像します

楼門を出て直進すると、思わせぶりな空き地が見えてきます。
これらが先ほど見たジオラマの講堂やら七重の塔に相当するので、「今は空き地だが昔は……」とイマジネーションを全開にします。




▲ここは金堂の跡。
何もないですが、ここの金堂、36.1m×16.6mもあったらしいです。
すごい広さやなぁ……と思いながら緑の地面を見てください。
そうしないと単なる空き地です。



▲礎石はよく見ると、梅干しに似ていてかわいい。



▲ここは七重の塔の跡です。生えている銀杏の木もたいがいな大きさでですが、塔の高さは60メートルあったと推定されています。いまの法隆寺五重塔の倍の高さで、武蔵国国分寺がいかに重要であったかを物語っています。
せっかくなのでオリンピックの招致などにお金を使わず、この塔を再建したりしたら西東京のシンボルになっていいのではと思います。四天王寺の塔も鉄筋で建てなおしていますしね。

お客さんがまばらでゆっくりできる殿ヶ谷戸庭園も見逃せません

ここまででもいい旅ですが、まだ時間がある人は、行きしなにチラ見えした庭園、殿ヶ谷戸庭園に立ち寄ってみることをおすすめします。三菱の岩崎家の別荘だったところです。
今や入場料100円を払えば、発言小町の「わたしの夫は年収2000万円で……」の煽りに本気で腹を立ててしまうような平民でもゆっくりすることができます。ありがたや……。


▲この庭園は、「回遊式林泉庭園」とのことで、北斗有情破顔拳(注:トキというキリスト似のオッサンによる拳で、死ぬときに痛くないというか気持ちいいらしい)みたいですが、武蔵野特有の、崖の下の谷のところから湧き水が出てくるという地形をうまくいかして作られた庭園なのです。六義園などに比べると高低差があってワクワクします。


▲バンブーに意識を集中させると京都かどこかに来ているかのような気分になることも不可能ではありません。




▲雑草が生えすぎでピンとこないかもしれませんが、ここから湧いている水は「次郎弁天の清水」と呼ばれる名水。



▲当時の別荘をだいぶ縮小した紅葉亭も見学可能です。小学校の図書室の匂いがします。
ここで、再開発計画への反対運動があり、その成果として作られた庭園であることを示す黄ばんだ資料が満載。ありがたや……。



▲道路をはさんで庭園の向かいには、国分寺マンションが建っていて、高度経済成長期の文化遺産のような風格があります。朝日屋洋品店とか入ってそうやなと思ったら本当に入ってた。
よく考えてみたらわたしが今住んでいるマンションもこんな感じやわ……。見た感じはいいけど古いマンションって備えつけのコンロが古くて火力弱かったりするのが難点なんだよなぁ……などと思いながら帰途につきました。


今後も都内の地味で楽しいスポットを紹介していきたいと思うので、また見にきてくださいね。