ココロ社

主著は『モテる小説』『忍耐力養成ドリル』『マイナス思考法講座』です。連絡先はkokoroshaアットマークkitty.jp

中で食べたり見たりできる遊郭&娼館〜大阪・飛田と横浜・黄金町〜

こんにちは。

今回の特集は、ズバリ言うと慎太郎先生にお仕置き(三角木馬、電気ショック、「トイレの神様」がエンドレスに流れるトイレでのトイレ掃除etc.)されてしまうかもしれないので、ちびっ子が読んでも大丈夫な感じ、ファミリーで読めるブログにしたいと思います。かといって、ちびっ子そのものを文中に登場させると、それはそれでやりすぎで慎太郎先生がお怒りになるに違いなくて、たいへん調整が難しく、その困難さたるや、冬場のシャワーのお湯と水のミックスのごとしです。

―お前の家のシャワーの事情なんて知るか、という声が聞こえてきたので悔い改めて話を始めたいと思います。今回は東西の遊郭的なところが風情があって楽しめるという話なので、お近くの方は参考にしていただければありがたいです。


大阪・天王寺近くの遊郭建築でホットな鍋を玩味する

日本中に「ノーモア・エロ」という声が渦巻く中で、エロチック is still aliveな大阪の飛田新地。ざっくり言うと天王寺の近くなのですが、エロチックであり続けるがゆえ、エロチックでない人にはちょっと敷居が高い、というか、実際のところ、敷居というか、スプリングをセルすることを余儀なくされていたレディたちがエスケープすることをアボイドするためのウォールといいますか、そういったものがわりと最近まで残っていた地域なのでありますが(自分でも何を言っているのかわからんようになってきましたが、もうしばらくおつきあいください)、エロチックでない人のために、昔ながらの遊郭の風情を残した「鯛よし百番」という有名な店があるのでこちらもレポートさせていただきます。ちょうど寒いこの季節、鍋でもしばいたろか(なお、「食べる」「飲む」の意味での「しばく」は、ネイティブ大阪人のわたしでも発音されたのを聞いたことがありません)という人にはおすすめです。


▲建物の外観はこんな感じ。
大正初期の建物で風格あり。



▲扉を開けると赤いじゅうたんとおばちゃんがお出迎えしてくれます。
写真を撮りたい人は、首からカメラを提げて、いかにも「撮りまっせ」という感じにしておけば配慮してもらえます。
あんまり長い時間撮ってると気まずいですが……。
入ってすぐのところに陽明門があります。





▲本物の眠り猫は坂下門にありますが、こっちの眠り猫は都合よく陽明門に配置されとります。
アミアミの中で厳重に保護されており、本物よりも厚待遇。
網タイツが好きな人はこういのでもトキメキを感じたりするんだろうか。



▲橋があって豪華な感じ。しかし橋なんて外に行けばいっぱいあるのに、なぜ室内に橋があるというだけでこんなにもテンションが上がるのか。



▲陽明門をくぐると待合室があり、今や誰をどう待つのか不明ではありますが、天女やら牡丹やらが壁に描かれており、なんやわからんけど自分がとっても歓迎されているような気分になります。それが愛情か友情かはわからんけど、少なくとも嫌われてはないねー。



▲高松塚古墳のレリーフが、室内にあるというのに野ざらしになっているかのようにたわんでおり、本物もカビが生えていたりして大変やったなぁ、大丈夫かしらと心配になってしまいました。


2階に上がります。



▲扉は金色、床は青紫色のじゅうたんが敷いてあってエロチック。
そういや、中学生とか高校生のとき、、紫色の服を着ていると「紫は欲求不満の色やな」とか言ってたけど、本当に欲求不満だったら透明の服を着てるんじゃないかと思います。



▲壁のイラストレイションは薬師寺でしょうか。
もう描いている方も何をイメージしているのかわからんようになって描いているのかもしれんけど。



▲個室はいたってノーマルで、老舗の日本料理店といった風情。2名でも普通に予約可能です。
個室なのでゆっくりできますが、テーブルが広くてノーマルな和室なのでここで口説いたりするのは無理。
口説き済みの人と行くか、次の店で口説くかしてくださいませ。
料理は大阪の鍋やなーという味わいで、「大阪っぽいことをしたい!」と願ってやまない人にはうってつけです。



▲2階から中庭を眺めます。
日本家屋の風情で、この写真だけ取り出すといい感じなので、この写真のみを見せて、「大正のロマンあふれる家屋で鍋でもどうや?」などと誘うことも不可能ではありません。
たしかに大正ロマンではあるが、男性限定のロマンかもしれんね……。


この店、予約困難というわけではないのですが、しばらく閉店していた期間があり、行くんだったら早めで、行くときは恥を捨てて、いいカメラを持参で撮る気マンマンで臨むのがオススメでございます。

鯛よし百番

食べログ 鯛よし百番


横浜・黄金町の愉快な旅館

横浜といえばオシャレタウンで、関西の人に神奈川県の解説をするときは、「横浜っちゅうたら神戸みたいなところで、鎌倉っちゅうたら京都みたいなとこ」と説明していますが、オシャレなイメージの強い横浜も、京急で5分ばかしいくと、ちょっと違う雰囲気の街になります。


黄金町はかつてはオットセイと蘭の花が金銭を介して出会う街として栄えていましたが、オットセイと蘭の花が出会うこと自体はともかく、金銭を介するのはけしからん、そこらへんでオットセイと蘭の花が出会っていたら、子供たちも戸惑ってしまいますし、周辺の住民も困るだろうということで、オットセイと蘭の花の金銭を介した出会いが行われていた部屋は閉じられてしまったのですが、しかし、その跡地でどうするか、オットセイと蘭の花が出会うのはやめたとして、松茸と赤貝の出会いだったらいいのか、というと、当然ながらそんなことはなくて、どうしたものか、というところで、アートで何とかしよう、という話になったようです。
ただし、オットセイと蘭の花が出会っていた時期の方が経済効果は高かったようで、思うようにヘルシーにはなっていないようですが……。


この黄金町では9月〜10月の間、黄金町バザールというのが開催されており、もっぱらオットセイと蘭の花が金銭を介して出会っていた街にアートがあふれるのでございます。まあアートといっても玉石混交で、それはオットセイと蘭の花の時代も、いい蘭の花と悪い蘭の花があったのと同様なのかもしれず、その意味においては今も昔も選球眼が必要な街ではあるのでしょう。



▲このへんはレンタルマンションになっていて、なんとなく泊まってみたい気もします。
これってやっぱり昔はドアのところにレディたちがひしめきあって瑞々しさをアピールしていたりしたんでしょうかね。



▲イベント中はこのようにアブストラクトな地図によるナビゲーションを満喫できます。



▲この部屋の来歴がノーマルなものだったら、「別に……」という気持ちになりますが、オットセイが蘭の花に首をつっこむなどのおかしくも哀しい行為が幾度となく繰り広げられた部屋にチープな光が当たっていると思うと、思わず笑みがこぼれてきます。



▲2階から下を見ると、上からコインが落ちてくる映像が流れていて、ちょっと面白いです。
どうせ映像なんだから景気よく500円玉とかにしてほしいという気持ちをかきたてるアートです。



▲また、映画が上映されている部屋もありました。
これは、アートの意義について考えさせられるという意味においてアートですね。


黄金町の建物は最近のものというのもあって、あんまし文化っていう感じではないのですが、今から紹介する日の出竜宮は建築を楽しめます。
黄金町から歩いて次の駅の日ノ出町の近くにある、旅館を改装した建物が日の出竜宮(山賀旅館)です。
黄金町バザールの会期以外でも開けているっぽく、展示はその時々で違うようです。
最新の情報はこちらのtwitterで確認することができます。



▲外観は非常にポップで、ベトナムの市街地のようです。
なお、自転車がさかさまになっているのは誰かのいたずららしく、戻ってきた小学生がやり場のない怒りを露わにしておりました。
しかしこれはいたずらと言いきれるのでしょうか?「やり場のない怒り」を早くから体験し、世の中の理不尽さに慣れてほしいという親切心から自転車を逆にしたのではという気がしてなりません。



▲建物の中は風情がいっぱいで、オフロはこんな感じ。
魚眼レンズで全貌を撮っています。浴槽はあんまし大きくなくて、中が段になっております。
こういうところに二人で入ると、格下の方が段のところに座ると考えてふるまってきたのですがどうなんでしょうね。



▲また、どうにも見過ごすことができないのが、このガラスのレリーフです。
これを見ただけで、この旅館がノーマルな旅館ではなかったことがうかがえますね…
女体をデザインしろと言われて嫌いなタイプの女をデザインする人はいないと思いますが、だとすると、これを作った人の頭の中では、これはかなり美しい女性なんですよね。個人的には全然好みではないので、微妙な気持ちになりましたが、もしここに描かれた女性が飛び出してきて、フローベールの『紋切型辞典』について語り始めたら、たちまち好きになってしまうと思います。



▲階段は太陽光が採れるようになっていて、ここだけ妙に健康的です。

二階では、部屋ごとにアート的なサムシングが展示されており、時期によって違うようですが、わたしの行ったときは下記のようなアートが満載でした。



▲ちょっとこれは考え込んでしまいますよね。
何がアレかっていうと、男性諸氏は、この人形を見て「いい感じやなぁ」と思った人が多いかと思いますし、わたしもそう思いました。朝起きて横にこんな感じの人が寝ていたら、びっくりしますが、追い出したりはしないですよね。
しかし、しかしこのわたしの好みのタイプの周辺にはありふれた獣たちの人形が置いてあります。つまり、女の人の人形と獣たちの人形は、センス的には同じレベル。同じくらいわかりやすいということです。つまり、この人形をいいと思った人の趣味はベタベタということで、自分の趣味が思いのほか保守的であることを突きつけれた気持ちになってしまったのですが、いかがでしょうか。とくにわたしは個性派気取りなので、こんなありふれた美女を見ても悠然とスルーすることを期待されているような気もしますが、そうではないところに非常にモヤモヤとした思いが発生します。
別にそれを感じるためのアートではないとは思うのですが、自分のノーマルさを思い知ることができるアートでした。



▲この展示の仕掛けは、魚眼レンズで撮ったこの写真だとわかりやすいかと思います。



▲こちらは屋根裏部屋っぽくなっており、何やら絵が飾ってあります。屋根裏好きにはたまらないですね。
わたしの独自統計によりますと、屋根裏部屋が好きな人のほとんどがカステラの茶色い部分が好きだという結果が出ております。




▲広い部屋に大きな人形が一つ。どんなに想像力が貧困な人でも、この目のところ……あとお腹のところ……。



▲この部屋、天井のデザインがくもの巣みたいで素敵です。
気分が沈んだときの朝って、みなさんも天井をじーっと見てたりすると思うのですが、ふつうは何もない天井で、イマジネーションがわかず、しょうがないから起きてやるかという気持ちになると思いますが、こんな天井だったらイマジネーションが広がり、起きれなくなってしまいそうです。



―そんなこんなで、今年もよろしくお願いします。
なんか去年はサラリーマン稼業と本を出すので精いっぱいで、ブログの更新がおろそかになっておりましたが、今年は趣向を変えて、面白さ爆発のブログを展開していきたいと思います。