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ココロ社

主著は『モテる小説』『忍耐力養成ドリル』『マイナス思考法講座』です。連絡先はkokoroshaアットマークkitty.jp

ついにレコードの時代が終わる

音楽

「ついにレコードの時代が終わる」と言うと、「え?レコードなんてとっくの昔に終わってただろ?」と思う方も多いと思います。たしかに90年代に入った時点で新譜のレコードは市場からほとんど姿を消してしまったのですが、ハウスやヒップホップなどのクラブミュージックの世界では、今もレコードが主流だったのです。

CDが出てからも、クラブミュージックはレコードが主流だった

結局、CDが出て20年以上経っても、ハウスやヒップホップではCDが主流となることはありませんでした。その理由を列挙すると、

(1)CDはノイズが少ないが音が細い。
(2)CDはすり減らないって言うけど、レコードをすり減るまで聴くことなんかないので問題なし。むしろCDは「半永久的に聞ける」と言っていたのに錆びた。
(3)レコードは直感的に操作できる。途中の間奏から聞きたいと思った場合、適当な箇所に針を落とせばいいだけ。2分先も5分前も一瞬で選べるが、CDは早送りや巻き戻しをチョコチョコ押さないと、目的のポイントが見つからなくて不便。
(4)レコードはスリーブを斜めにして取り出し、針を落とせばすぐ聴けるが、CDはケース開けて取り出してトレイに入れて読み込むのを待つ。アルバム単位で音楽を聴くことはまずないので、1曲ごとに微妙に待たされる状態が発生してストレスフル。

(1)(2)はジャンルを問わずに当てはまります。(1)については、ちょっと気のせいかもとも思うのですが、(3)と(4)については、「シングル盤を買ってきて、最初から最後まで聞くのではなく、気に入ったところだけを聞く」という特殊な楽しみ方をするクラブミュージックならではの事情がありました。「使い勝手」という観点からすると、CDはレコードに比べ、むしろ退化していたと言えます。

しかし、ここにきて輸入レコード店が撤退しはじめた


先日、渋谷のマンハッタンレコードのハウス店に行ったのですが、いつもと違うレイアウト…っていうか「ありがとうございました」って書いてある!閉店セールでした…*1同じく輸入レコードを扱うシスコは、市場をリードできるバイヤーがいるので盤石の地位を…と思いきや、大阪店が閉店するようです。今確認したら、渋谷店も12月に規模が縮小されて統合だそうです。信じられません。

CDの時代は生き抜いたものの、ネット配信で息の根を止められる

クラブミュージックの世界においては、CDが出てからもレコードは生き延びることができたのですが、ネット配信には徐々にシェアを明け渡しつつあるようです。レコードの新譜が発売されなくなる日もそう遠くないと思われます。冷静に考えてみて、「1000枚の塩化ビニール製の重い板をプレスして、小分けにして全世界に発送する」というビジネスは、割に合わなさすぎです。レコード屋にとっても、バイヤーがトレンドを読み損なったら、単なる黒い板を在庫として抱えなければならないというリスクがあります。世界中に出して合計1000枚程度という(ものによって多少違いますが)、多品種小ロットの極みが今のクラブミュージックなのですから、実は他のジャンルに先駆けてダウンロードで商売をしないとやっていけないはずでした。しかしポップスやロックという、大量生産大量消費のジャンル(つまり、CDを売っても十分に利益が確保できる)になぜか先を越され…つまり、先述の使い勝手問題があり、ここまで延び延びになっていたということなんだろうと思います。

今、クラブミュージックのネット配信で先行しているサイトは、Beatportです。まだまだレコードに比べると品数は少ないですが、12インチシングルが1280円して、しかも中の1曲しか聴かないのであれば、1曲200円程度で買えるBeatportは魅力的です。時差なく新鮮な音楽が手に入るし、売り切れがないところもステキ!もちろん売る方にしてみても、在庫を持たずに世界と商売できるというのはすごいメリットであるはずです。

レコード同様の使い勝手で音楽ファイルを扱えるツールが登場

ということで、唯一にして最大の問題である使い勝手がよくなれば…ということになるのですが、ようやく本命視されるツールが出てきました。NATIVE INSTRUMENTSの"TRAKTOR SCRATCH"です。操作はすでに持っているターンテーブルで行えます。タイムコード情報が入っているレコードを使い、パソコンとつなげて音楽ファイルを再生する仕組みです。スクラッチも自在だし、何より今までのレコードもそのまま使えて、デジタル化もできるというのが素晴らしすぎます。
似たようなものは前からあったのですが、ソフトの使いやすさと、反応速度の良さから、売れているようです。このデモを見たら、レコードから直接音が出てるようにしか見えませんね。


でも、個人的には、重いレコード袋を持って「今日は買い過ぎちゃったなぁ…」っていうのを四半世紀も続けてきたので、寂しいですね。
第一、「ムシャクシャしたからヤケ買いなのー!」と思ったときのヤケ買いアイテムって、ぼくの場合はレコードだったんですが、家でダウンロードしててもヤケ買いっぽくなくてスッキリしないだろうなぁ…あと、売り切れになったレコードを見つけたときの感動もなくなるんだろうし…

*1:注:ハウス店のみ。他の店舗は存続してます