ココロ社

主著は『モテる小説』『忍耐力養成ドリル』『マイナス思考法講座』です。連絡先はkokoroshaアットマークkitty.jp

はてな鍋奉行(2)

id:jounoさん、言葉足らずだった部分もあると思うので、論旨を整理させていただきますね。もう了解済みの話が多いかと思いますが。ぼくは、ユーザーがキーワードを削除できることに関しては特に問題にしていません。削除する人の一部の態度が問題であると思うだけです。

(1)あるキーワードが登録されたとします。その登録で何の害も被ることもないはずの第三者がキーワードを削除しようとしたら、人は普通不快に思うものではないか?
例のキーワードが、公的であっても私的であっても、(それに削除依頼をかけた)Aさんの暮らしには一切関係のない話です。
たとえば、Aさんが傷つくような内容であったり、自分が今後使用しそうなキーワードとかぶっていたり、自分の書いた日記に不具合を生ぜしめたりするものであれば、削除の提案をすることはまったく問題なかったと思います。しかし、個人としてのAさんの暮らしには何ら関係なかった。では、なぜAさんが削除依頼をかけたのでしょうか。

(2)しかもその第三者が、誰に委任されたわけでもないのに、公共の利益の名の下に削除依頼をかけてきたとしたら、ますます不快なのではないか?

Aさんは、個人の利益というレベルを超えて行動されたと思います。そもそも、例のキーワードをAさんはいかにして知り得たのでしょうか?日記を書いていて例のキーワードと同じ文字列が偶然出てきたのでしょうか?…いや、Aさんは、新しく登録されたキーワードを逐一監視するという、通常では考えられないようなはてなの使い方をしていたのです。つまり、Aさんには何ら関係ないキーワードを、Aさんの主観的な基準(あるいは一部「有志」の方がユーザーの合意を得ることなく作った基準)で「不適切」と判断して削除依頼をかけた。Aさんは削除するときに「私的なキーワードは差し控えていただければ幸いです。」とコメントしていました。この「幸いです」は、彼個人の「幸い」でないことは明らかです。なぜなら、私的なキーワード登録がなされたとしても彼が不利益を被ることがないからです。では、だれの「幸い」なのか?Aさんは「「幸い」ははてなダイアリー利用者全体に掛かっているつもりです。」と意図を書かれましたが、そのことがすでに問題であると思います。なぜなら、Aさんは、誰に選ばれたわけでもないのに、はてな市民の民意の代弁者であるかのような物言いをしているからです。もちろん、このAさん的な行動をとられている方は、私の知っているだけでもあと何人かいます。「自分に無関係なキーワードを、公共性の名の下に削除する」という行為が問題だと思うのです。


以上二点を確認させていただいた上で、id:jounoさんのエントリーに感想を書かせていただくと、「対等なユーザー同士が一つのキーワードに関して削除したりされたり議論したりする」ということに関しては何ら問題はないと思います。これに関してはid:jounoさんと私の認識は同じだと思います。しかし、私が問題にしているのは「自分が実害をまったく受けていないキーワードを、公共性の名の下に削除する」という行為です。例のキーワードの件に関して言うと、たまたま削除したキーワードを登録した人とそれを支持する人々が、不機嫌な大人たちだったから削除は撤回されましたが、気が弱い人だったら、そのまま削除されて終了したんだろうと思いますし、事実、Aさん的な振る舞いによって、いくつのキーワードが闇に葬られてきたことか…と思います。すでにはてなでは一定の抑圧的なムードが流れていて、事態は修復不可能だと思うし、私自身、それを何とかしようという意欲もありません。たとえば今、誰かがキーワードを登録したいと思って「キーワード作成ガイドライン」を見たら「こんな面倒なチェックをしないとダメなのか」と思い、キーワードを登録する気にはなれないと思います。「問題が起きる前から先回りしてルールを作る」。出来の悪い私立中学の校則みたいです。
はてなのキーワードのシステム自体、「最初は私的なキーワードにすぎなかったものが、いつの間にか流行語になり…」という楽しさを秘めているシステムだと思いますが、抑圧的なムードによって、この可能性が台無しになっているのではないかと思います。はてなでは、どこかですでに流行している言葉をキーワードに取り込むことは「公的」だから認められるけれど、はてなが自前で、いまだ流行していない「私的」な言葉を流行語へ育てることは難しいムードになっていると思うのです。
今回のキーワード問題はその一例にすぎないと思っています。