ココロ社

主著は『モテる小説』『忍耐力養成ドリル』『マイナス思考法講座』です。連絡先はkokoroshaアットマークkitty.jp

興福寺展

博物館で、本来想定されている文脈から切り離され、本来想定されている光とは違う光に照らされていても、ぼくは平気なので博物館は「いろいろ見られてラッキー」と思う。ぼくは仏像を見つめるだけで拝んだことはないけど、寺の中にある仏像はみんな拝むのに、博物館で拝まないのは、結局仏像そのものというよりも、その場の文脈を拝むということなんだろうか。

興福寺展の目玉は、運慶作の「無著・世親菩薩立像」、日本史のテストにも出る「天燈鬼・龍燈鬼」、迫力満点の四天王立像といったところ。東京芸大の展示室はさほど広くないので、国宝レベルの宝がひしめきあっていてすごく贅沢な気分になる。なかでも四天王立像は、重文レベルであるせいか、ガラスケースに入っておらず、明るい中、かなり近くまで寄って見られるようになっており、すべてが白日のもとにさらされ、霊験もへったくれもなくて面白かった。運慶作の2点は、並べてあるものの互いの年齢が異なり、対をなしていなくてかっこいい。しかし菩薩っていうか、人やんそれ、と思った。彩色してある状態で見たら、東京タワーの蝋人形とあんまり変わらないんじゃないかと思った。

で、「天燈鬼・龍燈鬼」だけど、天燈鬼は9/25まで…残念…他の展示物も10/13で微妙に交代するらしい。キー!龍燈鬼は灯りを頭の上に乗せる刑に処せられている鬼で、近くに寄ってみると、上目遣いで灯りをうらめしそうに眺めていて、非常にかわいい。ずば抜けたユーモアのセンスが感じられ、見ていて飽きない。たまにこういう面白いものがあるけれど、仏師はニヤニヤしながら作っているのだろうか。それともユーモアは現代人が勝手に見出しているだけで、仏師は大まじめだったのだろうか。

地下が絵とか巻物とかで3Fが彫刻という構成で、地下の春日近辺の曼陀羅図は、ちゃーんと春日大社が、しかも別格の神々しさで扱われている場合が多く、神仏習合の極みでこれも面白かった。

はてな寺社めぐり、誰も書かなくても続けるからね…